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株式会社テクモア
代表取締役 稲田 正行さん
独自の経営哲学で
いくつもの危機を乗り越える
那珂市出身。大学卒業後大手電機メーカーに就職。35歳で独立「富士エンジニアリング」を設立。その後「テクモア」に社名変更。県内企業の隠れたトップランナーとして業務を拡大。農業、福祉、エネルギー分野まで見据えた企業活動を指示する。
- Owners Company
- 株式会社テクモア
- TEL.0296-71-2224
- FAX.http://www.tecmoa.co.jp/
- http://www.tecmoa.co.jp/
- 笠間市旭町469-1テクモアファシリティズ
電気のエンジニアリング会社から農業へ参入
さらには介護、エネルギー産業まで先を見つめて成長を続ける
20世紀に入り、日本を含め世界の社会構造は大きく、しかも驚くべきスピードで変動を続けています。
新規に起業する人にとっては大きなチャンスかもしれませんが、その一方ある程度の成長を果たした会社にとっては、さまざまな試練の火の粉が降り注いでいるのも確かです。
そのような社会情勢をいち早く見極め、常に先手、先手と成長の歩みを止めない企業が笠間市に本社を置く株式会社「テクモア」です。
大手電機メーカーから外注を受け、さまざまな電気製品の製造・設計などを行ってきましたが、エンジニアリングの世界から農業、介護、さらにはエネルギー製造まで業種の転換を図ろうと挑戦を続けています。
社長の稲田正行さんは大学工学部を卒業後、大手電機メーカーに勤務。平成元年にひたちなか市内に「有限会社富士エンジニアリング」を設立し、メーカーからの外注を受け工場の変電所の遮断機やモニターなど電気・電子の設計を行い、会社は着実な歩みを始めました。
しかし、最初に訪れたのはオイルショックでした。大手企業では外注先の見直しを進め、稲田さんの会社も受注先の見直しを迫られました。そこで、それまで1社のみの受注だったものをほかの電機メーカーからの仕事も受けることで、会社が生き残る道を探って行きます。
しかし、次の波はまもなくやってきました。バブルがはじけ、社員30人ほどをリストラしなければならない事態に見舞われたのです。しかし、当時はエンジニアリングの仕事から現場での製造に関わる仕事が増えていた時期でした。
そのため、技術者を中心に一時は500人ほどの人材を派遣するという会社の成長期に差し掛かっていたのです。
人材派遣業務により会社はバブルの波を乗り越えました。
平成16年には社名を現在の「テクモア」に変更。
「技術のTech」を「もっと!more」と意味を込め、さらにテクモア=「手を組もう」という音に合わせ「顧客様との協力関係や地域・社会との連携を積 極的に担っていく会社」という意図も込められました。より取引先や一般消費者との距離を近づけるという社会貢献企業としての企業姿勢を鮮明にして行きま す。
ところが次の試練は順風満帆なマストに新たなショックを与えます。
リーマンショックでした。
日本企業が次々と仕事を中国へと移管することになり、現場系の派遣業務がしぼみつつあったのです。
そこで新たな仕事を見つける必要に迫られたのです。
稲田さんは「ここで新規事業を立ち上げるとなると、地元の人が出来る事が必要です。
私たちは物を作って市場に出したいという思いがありました。
もの作りにこだわりがあったのです」と振り返ります。
「しかし産業製品は資金も必要です。
でも、農業だったら一生懸命やれば我々の能力でできる」と確信。
「もの作りでは一緒」と、農業分野への参入を決意したのです。
とはいえ、新規参入にあたって「身の丈にあったもの」「既存の分野に無理に参入しない」と地元農業者との共存の道を探り、行き着いたのが「四季なりイチゴ」という夏にも収穫出来るイチゴ栽培でした。
これまでは国内のイチゴは冬場が最盛期。夏のイチゴは99%が輸入物という現状に、稲田さんの挑戦魂が顔をもたげます。
「私には『今日の非常識が明日の常識になる』というDNAがあるのです。
みんながやっていないもの、ちょっと不可能と思われるものに挑戦したかったのです」と稲田さんは話します。
稲田さんはその例えとして大リーグのワールドシリーズで松井秀喜がMVPを獲得した事例を取り上げました。
「ほんの25年前までだれもが日本人が大リーグで活躍するなんて想像もしなかった。
それが実現したのです」とあえて難しい道を選択したのです。
四季なりイチゴは主に生食ではなくケーキ用の栽培品種です。
必要条件は日持ちがして、形の良い物、しかも味はケーキのクリームにマッチしたもの──という条件をクリアしなければなりません。
生食用のイチゴと違い、栽培方法も全く異なります。
プランターや薬剤にしてもそれまでの栽培技術は通用しません。
病気の発生など夏場に作るイチゴにはさまざまな難題が立ちふさがっています。
さらに、キノコ作りにも取り組んだ時、農業に不可欠な問題に気付きます。
「農業には油が必要なのです」。
ハウス栽培にはボイラーを用い、熱とCO2とを必要とします。
ボイラー用燃料を自前でできないかと、考えたのがバイオマス燃料の開発でした。
「30年前まではリッター35円だったのが今では4倍ほどの燃料費になってます。
農家は人件費を押さえて生産に取り組んでいるのです」と稲田さんは農業の現状を憂い、天ぷら油などの廃食油を燃料に変える技術開発にも取り組んでいます。
かつて人材派遣を行っていたノウハウは介護サービスにも目を向けます。
派遣社員用のアパートをバリアフリーにし、高齢者専用住宅を20室開設。
食事のサービス、安否確認、生活相談など一人暮らしの高齢者が安心して生活できる施設もまもなく完成します。
テクモアは、単なるエンジニアリング会社から真の社会貢献企業へと大きく羽ばたこうとしています。
これから起業する方への一言
“ゴールに入っても立ち止まらないこと”
社員にはウサギとカメの話をします。カメが勝つのですがゴールに入っても立ち止まらないこと。次の目標を立て足を止めずに一生懸命やり続けることが大切。続ける努力、精神力、タフさがあれば失敗も乗り越えられる。パイオニアが勝つ例は幾多もある。
■あれて、難しいものに挑戦し、不可能を可能にする意欲を持つ
■業種が異なっても、もの作りの基本は一緒
■社会貢献という意識を持ち続ける