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和楽や 美乃善
代表取締役  木村 藤雄さん

きっかけは旅の出会い、
苦労を楽しみ店舗拡大

日立市出身。名古屋での修業を経て、外商から「美乃善」を立ち上げ、日立店・水戸店を展開。衰退が著しい呉服業界にあって、顧客は横浜・千葉などにも広がり、成長を続ける。お客さまの「水戸にも店を」の声で開設、水戸店は長男・託也さんが取り仕切る。

Owners Company
和楽や 美乃善
TEL.0294-23-4648
日立市助川町1-17-13

お客さまの喜ぶために、最善を尽くし
着物文化の隆盛に力を注ぎ成長を続ける

文字通り木村社長が裸一貫で始めた新参の呉服店「美乃善」は、日本古来の呉服店に新風を起こした業界の革命児となっています。

 和服の着物文化の裾野を広げるばかりではなく、日本人の伝統行事や作法にまで目を向け、和服ならではの着こなしを提案。衰退傾向が見える和服文化に大きなくさびを打っています。

 「この道に入ったのは旅での出会いでした」と木村社長。

 「高校時代から旅が好きで大きなリュックを担いで、全国を旅しました。お金のあるときはユースホステルに泊まったりしましたが、野外で毛布で寝たり、川で体を洗ったりとちょっと昔に流行した『猿岩石』が行ったような旅をしていたのです。」
そしてその旅の道中、木村青年はある女性と運命的な出会いをします。小豆島で出逢ったその女性は「『私の友人のご主人が勤めるお店の住み込みの方が、1週間も勤められないで辞めていく』というのです。好奇心旺盛だった私はそんな職場をのぞいてみようと...」と木村社長。

 そしてしばらく一緒に旅した後、向かった先が名古屋の老舗呉服店だったそうです。木村社長の人生はここで決まったといっても過言ではありません。

  「まるで丁稚奉公のようでした。住み込みで、番頭さんなどの先輩がいて、食事もお風呂も何事も最後で、シャワーは水しか出ませんでした。朝は掃除に始ま り、昼の用意をしたり・・・。でも全然苦労と思いませんでした」と木村社長。それは、もしかしたら放浪の旅の経験が生かされていたのかもしれません。

 しかしながら、そのような職場環境でしたので、後輩の新入社員が入ってもやはり長続きしません。女性の言う通り、みんな1週間ももたず辞めていったそうです。

  又、業務内容はもちろんですが、それ以上に上司やお客様との関係も大変厳しく指導されたとの事。「私は主人や先輩とお客さまのところに行っても、決して畳 の部屋には入れません。ずっと廊下の板の間で控えているのです。今となってはまるで時代劇みたいですよね」。それでも木村社長はその中でもしっかりと勤め 上げていきます。そして、日々を重ねるごとに知識と技術を積み上げていったのです。

 「仕事が終わってから、着物等を解く事により色々と学ぶ事ができ、その中の一つとしてその人の体つきで寸法割り出しが分かるように成り、お客様に合った縫い方や寸法を提案できるようになりました」。

 そしてやがて名古屋から日立に帰り、地元の呉服店に就職しましたが、ある日突然父親が病気に倒れてしまう事態に...。

 これがきっかけとなり、木村社長は「父親が生きているうちに独立した姿を見せたい」と一念奮起。遂に「美乃善」の立ち上げとなります。

 最初はたった10万円の資金と車一台の外商でしたが、お客さまの要望で、国道6号沿いに「閉鎖的ではないドアのない店を作ろう」と念願の店舗を開設。お客さまの声を大切に聞くうちに店舗や和小物、草履、バッグ、雑貨などもそろえるようになっていったそうです。

 地元の日立店に続いて、水戸にも店舗展開する「美乃善」は成長の歩を止めません。この飛躍の秘訣は、前述の"品揃え"に加えもう一つありました。レンタル着物よりも安い和服セットを用意できる」という経営姿勢です。
木村社長は「店舗にお金を掛けない」「良い品をより安く」「利益を求めるのではなくお客さまの喜ぶ顔を大切にする」を経営の3本柱にしています。

 実際「美乃善」の商品はどこの店よりも格安にお客様に提供しています。そこには経営努力もありますが、問屋や産地の生産者との太い心のパイプが存在しています。

 「社員研修会で信州の上田などに行き、紬の染め、織り方などを学んだりしています。産地と直接取り引きすることができると、問屋経由ではなく安く仕入れることも可能になるのです」と技術研修とともに産地との関係を築く努力も怠りません。

  「子供にはおさがりや古い着物を着せるよりも、新品を着せてあげるのが日本のしきたりです。かと言って高いものではなくて良いのです。新品であれば、だか らこそ、3才祝着セットを4,980円という驚きの価格で提供しております。それはお客様が喜んで頂く事が第一と思っているからです」。

  しかも"安かろう悪かろう"という商品は一つもない出さない品質の良さも堅持。「展示会で振袖30点フルセットに30万円の値が付けられた商品でも私のと ころでは10万円で提供していますが、あくまで手縫いで裏地もポリエステルなどを使わず、絹を使う」と、品質にもこだわります。

 木村 社 長は「自分の利益優先では必ず行き詰まってしまいます。お客さまのために尽くしてあげて、そして見返りを求めては駄目なのです。やってあげられる喜びを感 じることが大切です」との事。何とオリジナル振袖フルセット(下絵より手染・帯別織)で60万円という価格で制作したこともあるそうです。

 おおらかで柔らかい笑顔を振りまきながら「安く提供して日本の伝統文化を着てもらえれば、着物文化はまだまだ広がる」と、木村社長は次代を見据えた作戦を練り続けます。

Pick up Success in IBARAKI

“「商いは飽きたらあかん!」を心に刻む”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
名古屋などに比べると和服は少し高目な傾向にあり、お客さまも高いと買う気になれない。商売は安く提供するだけでなく、心も一緒にそろえる事である。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
大将に「商いは飽きたらあかん」と言われた。商売をするからには自分から飽きてしまっては駄目。細く長く続ける事が一番大切なこと。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
年に数回店のオリジナルチラシを制作してキャンペーンを展開。半衿(はんえり)を5円で提供するなど、お客さまをびっくり、驚かせることもPRに有効。

これから起業する方への一言

“死ぬまで勉強であると思う”

この道42年目にしてやっと商人(あきんど)になれたのかと思っているが死ぬまで勉強であると思う。石の上にも3年というが、壁のない人生はないと思うので、がんばって続けることが大切だと思う。やめてしまう小売店さんが多いが、その理由は「売れない」と諦めて、努力もしないのではないか。私のところへ来て頂けるのであれば、お客様の喜ぶためになることならノウハウをすべて教えます。

■専門店として日本の着物文化を伝える
■お客さまの喜びを第一に考える
■店づくりは客の要望によって変化する



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