President file
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和田質店
代表取締役  和田 優子さん

世界放浪の果てに、
家業と業界発展に尽力!

質屋というイメージを払拭した店作りで、店頭ではバッグ、時計、ジュエリーなどの商品を展示販売。水戸市城南の支店は女性向けの店舗構成で多くの女性が気軽 に来店。掘り出し物が見つかるチャンスも。和田社長は経営の傍ら、ご主人と組むバンド活動を行うベーシストの一面をもつ行動派の女性経営者。

Owners Company
和田質店
TEL.029-221-7069
http://www.wada710.co.jp
水戸市柳町1-13-18

100年の歴史を誇る質屋の4代目社長は
質屋のグローバル化を見据え、
次の歴史を刻む経営を目指し前進

創業明治45年(1912年)、今年で100周年を迎えた和田質店。そんな老舗質店で4代目として働く和田社長は話題の尽きない、まさに明朗快活な女性といった印象です。

 和田質店は現社長の曽祖父でもある初代社長が、老舗呉服店からのれん分けを受け創業。その後、呉服の古着などを扱い始め、戦後に質屋へと業態を変化させたそうです。

 「私の父は、脱サラをし家業を引き継ぎました。父が60歳になった時、『時代についていくためには若い人の考えが必要』とのことで、当時35歳だった私が社長に就任しました。」

  和田社長の経歴は豪快とさえ言えるものです。大学でキリスト教を専攻したことをきっかけに寺院に興味を抱き、学生時代はモンゴル、インド、イスラエルなど 世界各国を旅する生活を送られたそうです。「バックパッカーをしたお陰で、7年も大学に在学したものの結局卒業できなくて...」と屈託なく話してくれまし た。

 そんな明るい和田社長ですが、中学生の時「全身性エステマトーデス」という難病を発症。現在も投薬治療を続けているそうです。学生時代、放浪の旅で得たものがあったからこそ、病と向き合いながら持ち前の明るさを発揮できているのかもしれません。

 自由奔放ともいえる学生時代を過ごし、25歳の時和田質店へ入社。そのことをきっかけに質屋の仕事に専念。先代の社長から様々な知識を受け継ぎ、平成22年に社長就任。それからは、接客などをスタッフに任せ、質屋業の発展に力を注いでいます。

  質屋は世界各国にあり、歴史的にも1200年以上前からある業種。『罪と罰』や『ベニスの商人』など映画の中でも質屋が登場するものも多く、他の諸国では 身近な職業と言えます。「フランスでは、先祖から受け継いだ物を大切にする習慣があり、大切な物は長く使うというエコロジー思想が強いのが特徴的。そのた め、急にお金を用立てしなくてはいけない時、品物を質に入れ、一時金を用立てるということは当たり前に行われています。アメリカ、イギリス、ロシアなどで もエコロジー文化の後押しもあり、近年の質屋業界はかなり好調な様子。その情勢をみて、日本から海外進出を図る質屋さんもあるくらいです。海外の質屋さん が日本国内へ進出してくることは今のところないようですが、グローバル化はどんどん進むのでは」と和田社長はこれからの質屋産業を展望します。

  「お預かりする品物には金額的な価値だけではなく、色々な思いも詰まっています。できれば、お預かりした品物はお客様の手元へと戻し、長く使ってもらいた いと思っています」と、お預かりする品物への思い熱く語る和田社長。新しいことを取り入れつつ、昔から受け継ぐ思いを大切にしているようです。

  「東南アジアなどでは昔から貴金属を好きな人も多いのですが、それ以上に災害や政情不安から貴金属を所有している人が多くいます。貴金属なら持ち歩きも容 易ですし、世界的な相場が決まっていますから。金相場が高騰している昨今、フィリピンなどでは、高いからこそ売らないという考えの人が多いのも日本とは違 うところです。日本国内でも、昨年の東日本大震災以降、貴金属に対する意識が変わってきていますが、金相場が高騰し始めた時から売りに来るお客様が増えた のも事実です。お客様に『売らない方がいいよ。財産として持っていたほうが...』なんてアドバイスをしちゃう時もあります」とお客様への優しさも伺い知りま した。

 質屋は地域密着度が高く、長年営業している質屋さんが多くあります。「知り合いの質屋さんの中には創業400年という方もいる の で、弊社の100年なんてまだまだ」と謙遜気味に語る和田社長ですが、3月に水戸で行われた全国会議の議長を務められたとのこと。その会議には、全国各地 から今後の質屋業界を担う若手の経営者が集まり、様々な事を話し合ったそうです。「議長を務めたことは大きな自信に繋がりました。刺激を受けたと同時に責 任の重さも痛感しました。でも、腹が据わったとでも言いますか...」と、重責を果たし、大きく飛躍した様子の社長。他にも、コンプライアンス向上や盗品・コ ピー品の対策強化の研修、業界専門のオークション、警察関係との連携など出張も多く多忙な日々を送る社長ですが、「店の事はスタッフがしっかりやってくれ ているので安心です。良いスタッフに恵まれています」と、スタッフとの信頼関係の強さも伺えます。

 リサイクルショップなどの登場によ り 日本人の質屋に対する意識も変わりつつありますが、質屋は日陰産業と思っている方も多く、偏見が残っているのも事実です。「利用されるお客様には『ありが とう!』と言っていただけることも多いのですが、まだ質屋に来ること=恥ずかしいと思っている方も多いようです。質屋に来ることは決して恥ずかしいことで はありません。例えば、不動産を処分する時は不動産屋さんに相談しますよね。それと全く同じです。」と話す社長は続いてこんな話を聞かせてくれました。 「ほかには、高額なやりとりが行われていると勘違いされている方も多いようです。質屋は品物だけを評価してお金を融資する仕事。大体5万円以下の取引が主 です。催促もなく、多重債務に陥ることもないので安心で安全な庶民金融なんですよ」と笑顔で話します。和田社長はそんな偏見をどう払拭させていくか、入り やすい質屋作りを目指し、日々邁進し続ける明るい女性経営者でした。

Pick up Success in IBARAKI

“個人でやっている商売の良さを伸ばす”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
茨城県内でも、県央地区と県南地区ではそれぞれ独自の文化があると思います。その文化に馴染むことが多少なりとも必要と感じます。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
私は家業を引き継いで4代目となりましたが、業界内の付き合いも大切。経営に専念できる優秀なスタッフを抱えることも必要。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
サクラサクライフにほぼ毎月掲載していますが、広告ではなくあえて質屋全体についてのコラムにしています。質屋を知ってもらいたいので。

これから起業する方への一言

“始めたときの情熱を忘れないで欲しい”

自分たちがどれだけ社会にお役に立てるかを考えて、始めたときの情熱を忘れないで欲しい。私たちは個人でやっているが、そこでの良いところは絶対にあるはずで、自分たちの良さを伸ばして行くことを心がけている。地元で生まれたものは地元に返すという品物の地産地消の意識を持ってやっているが独自のこだわりを持ってやってみるのも方法の一つかもしれない。

■100年という歴史の重みに負けない経営を目指す
■世界を見ることでグローバルな感覚を磨き続ける
■貴金属の価値観が震災により変わるなど、柔軟に対応する



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