President file
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カンプロ株式会社
代表取締役会長  秋葉 憲一さん

「三つ子の魂」の言葉を実践、
幼児教育にも力を注ぐ

水戸市出身。県立水戸工業高校卒。プロパンガスは通常、国内1次基地から2次基地、卸(充てん所)、販売店を通じて消費者へ届けるが、1次基地から直接消費者へ届けるシステムで安いガスの提供を確立。趣味は読書、毎日のウオーキングを欠かさない。

Owners Company
カンプロ株式会社
TEL.029-247-1100
http://www.kanpro-gas.co.jp/
水戸市吉沢町567

 災害などの被害を乗り越え、ガス以外のサービスを展開
生活者の視点に立ったサービス業者として
県内ナンバー1へ

日常生活に欠かせないインフラのひとつにガスがあります。昨年3月に発生した東日本大震災では都市ガスは復旧までに多くの時間が掛かりましたが、その際に改めて見直されたのがプロパンガスの存在です。各家庭で独立して供給できるプロパンガスは、いち早く被災家庭に火のある生活を取り戻したのです。

 県内最大手の一つであるカンプロは元々は水戸市三の丸にあった鉄工所から業種を転換し、現在の地位を築いてきたのです。「先代が鉄工所をやっていたのですが、鉄工所は溶接などに多量の酸素を使用します。そこで酸素を取り扱うようになったのです」と秋葉社長は会社の変転のきっかけを振り返りました。

 秋葉社長自身はガスを取り扱うために高校卒業後、産業ガスの最大手・太陽日酸に入社。7年間、同社でさまざまなガスの知識を吸収していきます。そして、実家に戻り酸素の販売を手掛けます。「しかし、自動車工場などは車がFRPなどの素材に変わってきていて、酸素の取り扱いが減ってきました。必要とされるのは病院ぐらいで、さらにダンピング競争が始まりプロパンガスに比重を移したのです」と、業態は徐々に現在の形に近づいてきました。昭和30年に「関東プロパン瓦斯株式会社」を設立し、昭和35年にはひたちなか市枝川にLPガスの充てん所を設置。業績は大きく発展を続けて行きます。

 しかし、昭和61年夏、悲劇が訪れます。那珂川の氾濫により、枝川のガス充てん所は濁流に呑まれ、ガスボンベの多くが流されてしまいます。「500キロボンベが流されて、遠く鹿島港まで流れて行ってしまい港を塞ぐなどしてしまいましたので、海岸べりをボンベの回収などに奔走して、大変な思いをしました」と、多額の費用を掛けて、現在地へと移転することになったそうです。

 その後、関東プロパン瓦斯は製造部門に特化、販売部門として現在の「カンプロ」を分離独立させました。現在のガスの販売は95%が一般家庭というように、カンプロはユーザーと直結した販売会社としての地位を確立していきます。「建築業や不動産会社さんなどにセールスを行い、現在の契約者数にするのに約40年かかりました」と秋葉社長。県北の大子、日立などに営業所を開設したほかつくば、水戸北(那珂市)などにも営業所を開設し、顧客への要望に素早く対応できる体制を整えてきました。

 秋葉社長は「プロパンガスはサービス業」と位置付けています。「ガスの流通業者という意識ではなく、サービス業としてお客さまに近づいて行かなければならない」と、コンビニや郵便局のような消費者密着の方式を採り入れ、3000軒に1店、あるいは5キロ圏内に1店とサービス拠点を増やしていくという目標を掲げています。

 その一方、秋葉社長の口からは「農業」「こども」「高齢者」と意外な言葉が飛び出しました。このほど発表した「秋葉式炭酸ガス発生装置」は施設農業に取り組む農家にとって革命的な装置となっています。イチゴやトマト、水菜やピーマン、ベビーリーフやパプリカなどあらゆる野菜生産の現場で使われ、野菜の成長に必要な炭酸ガスの供給を行っています。「毎日データを取って、現在の装置を完成させました。その結果、イチゴの収量は約2割増しになり、糖度が増し、しっかりとした果実が実ります。実用新案も取りました」と農業分野への販路拡大を図っています。茨城大学農学部ではカンプロとの共同開発による新たな熱ショック栽培方法なども推進しており、カンプロの技術は産学共同研究にも役立てられています。

 さらに「三つ子の魂という言葉を大切にしています。3歳までに子どもたちの将来は決まってしまう。今は多くの場合夫婦共稼ぎでなくては暮らしていけません。そのため保育園にお子さんを預ける家庭が増えています。その子どもたちの教育に力を注ぎたいのです」と、保育園の理事も務め、幼児教育の本『育ち合い』なども出版。本業のガス販売以外にも精力的に取り組んでいます。

 カンプロの現在の社会貢献活動は多岐にわたります。地域に根ざした「カンプロお料理教室」の開催や「子どもを守る110番の家」参加、水戸ホーリーホックのピッチ看板スポンサー、地域イベントを応援するための社員による「ポン菓子隊」のボランティア参加、クリーンエネルギーであるLPガスの理解促進のため「水戸市環境フェスタ」へ参加など、さまざまな現場でカンプロの社員たちが精力的に活動しています。

また、カンプロの配送ネットワークを生かした高齢者独居家庭への新たなサービスも模索、秋葉社長の目指す「農業、子ども、高齢者」へのサービス事業へ積極的に取り組んでいるのです。


 秋葉社長は「ガス事業は県内に特化して地域ナンバー1を目指すが、次世代のための種をまくのも大切です。今は節電の一方補助金を出してまでオール電化の普及が進んでいます。私たちはサービス業の中のプロパンのポジションを考えようとしているのです」と言います。そして「業態が変わって行っても良いのです」と潔い姿勢を見せます。秋葉社長は常に時代の先を見つめ、顧客の視点に立った新たなサービスを展開するLPガスのトップランナーです。

Pick up Success in IBARAKI

“中小企業はすき間産業、新たなサービスを捜す”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
県南は多くの企業が進出しており競争過多になっている。県北の過疎地域ならではのサービスで、業務の拡大も図れるチャンスがある。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
ユニクロ、ソフトバンクも中小企業から始まった。人間を大きくすることを意識することだ。人間が大きくなれば組織も育ち、自分を育てることができる。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
社会貢献活動が大切。地域に根ざしたボランティア参加も有効。直接ユーザーさんに寄り添うサービスを志す姿勢を保とう。

これから起業する方への一言

“お客さまが向こうから買いに来てくれる企業を目指す”

燃料は薪から石炭、油、ガスとサービス形態が変わってきている。居酒屋から始まった「ワタミ」なども高齢者サービスなど業態が大きく変化している。要はディズニーランドになること。お客さまが向こうから買いに来てくれる企業を目指す。自己責任でチャレンジできるのが中小企業の魅力。自分の力で大きくできる可能性がある。

■時代を見通し、次世代への種をまく
■一つの業種にこだわることなく、変化を恐れず果敢に挑戦する
■社会貢献活動には積極的に参加する



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