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株式会社 プロフィール
代表取締役  浅野 晃さん

本音は独立したくなかった
若者の車離れにも警鐘

根っからの自動車好きで、一時は駐車場も借りて6台の車を所有。独立の際には「車好きは車屋になるな!」と言われたほど。祖母から「人生には3度のチャン スが巡ってくる」との言葉を信じて、チャンスを待つ誠実な人柄。国道6号沿いの「Garage Big Foot」のほか水戸桜通りのラーメン店「八海」も経営。

Owners Company
株式会社 プロフィール
TEL.029-240-0202
水戸市酒門町3201-1

自動車販売業界一筋で、独立を果たす
厳しき業界の逆風に立ち向かい飲食店も経営

自動車販売店にラーメン店と、異業種をまたにかけてバイタリティーあふれる活躍を見せる浅野社長。「このお店がたまたま空いたのとそれまで勤めていた会社 の後ろ盾があったというタイミングで独立したのです」と、6年前の独立の経緯を話します。それはリーマンショック後の経済がどん底の時代。「それもチャン スといえばチャンスだったのかも」と明るく話します。

 ひたちなか市内の高校を卒業後、大手カーディーラーに就職したものの、「本当は整備をやりたかったのですが営業として働きました。会社の体質にも合わなかったようです」と、わずか1年で退社。

 しかしその後就職した中古車販売店では、わずか1年で1カ月に40~50台の新車や中古車を売り上げるほどで、新人離れした営業成績で「月給50万円はもらっていました」と、当時バブルの時代とはいえ、破格の高給取りになりました。

 その後、ひたちなか市内の自動車販売会社へ再就職。さらに、3年後には別の会社へと移り、3つの会社で自動車販売の営業ノウハウを積み上げていきました。

  「昔は車の販売はボロ儲けと思われていました。確かに、メーターの改ざんなどグレーな部分もあり、雑で荒っぽい販売店もありました。しかし、現在はそのよ うな店は淘汰されています。中古車の仕入れではオークションで競り落とす場合など、車体番号だけでその車の履歴が分かります。厳密になっているために今は 安心して購入できる時代になったのです」と、自動車販売の現状を説明してくれます。

 ネットの普及により情報を消費者も共有出来るよう に なった半面、デメリットも生じたそうです。「昔はブローカーというような人もいましたが、商売としての面白みがなくなってしまったこともこの業界が低迷し ている大きな要因なのです」と、浅野社長は自動車販売業界全体の不振を嘆きます。

 しかも、浅野社長は「なんの商売でもそうですが、仕 入 れは外税、販売は内税。元々単価の高い自動車は利幅の薄い商売なのです。しかも車には車体そのものより、重量税や保険代などさまざまなお金が掛かります。 若い世代には大きな負担となっています」と、厳しい現状にも言及します。

 「昔は若い世代が流行を生み出し、それに合った車が出来て分 か りやすかったのです。サーフィンやスキーが流行ればそれに合った車種が作られ、スノボが流行ればそれに合った車が生まれ、ゆとりが出るとキャンピングカー なども売れたのです。しかし、今は若者たちが流行を生み出さない。むしろ中高年の人たちによる燃費がいい車が今のトレンドになってしまっているのです」 と、若者たちの自動車離れに危機感を抱きます。

 「実際、20歳前後で車を購入する場合、女性の方が高い軽の新車を買う傾向にあり、男 性 は中古の古い車を買うのです。これには年齢により任意保険料が違ってくるという背景もあり、若い世代には保険料が重くのしかかっているのです」と若者たち の現実性にも一定の理解を示します。

 とはいえ、本業である自動車販売で社業を発展させなければならない立場にある浅野社長はさまざな 取 り組みを始めました。大手ディーラーが行っている5年保証を、自ら提携会社との交渉の末、自社でも走行距離10万キロ以下の車で実施。さらに第3者による 査定機関に依頼した鑑定書をつけて安心・信頼を実現するシステムも構築したのです。またネットでの販売も強化し、県外からのユーザーを獲得することにも力 を注いでいます。

 浅野社長は「ネット販売も良いのですが、実車を見ずに購入する方が多くなっています。こちらでは問い合わせがあれば 細 かな傷でも画像をお送りしますが、すべてケータイメールでやり取りして、一言も喋らないで取り引きすることもあります。免許証の写しや印鑑証明なども郵送 で終わってしまうこともあり、車の購入方法も変わってきました」と、ネット取り引きでの不安ものぞかせました。

 前述した安心、信頼が 確 立してきた自動車販売業界ですが、浅野社長による未来予測図では「これからは消費税が最大のポイントになる」と断言します。「アメリカ社会では既に主流で すが、国内でも個人売買の事業が進んでいくことになるでしょう。個人間では消費税はかかりません。私のところでも親戚のおじさんが乗らなくなった車を譲っ てもらったので、名義変更などの手続きを行ってほしい-などの代行業務の依頼があります。ネットオークションなどでも既に始まっており、自動車販売よりも 個人売買の代行業務が増えていくでしょう」と中古車販売が大きな岐路に立たされていると言います。

 浅野社長の会社では整備済みの車を常にそろえています。専門業者を通さず、個人売買が進めば、整備が不十分であったり、過去に事故を起こした車といったことが分からないまま車を購入する不安も見え隠れします。

  「出始めた頃はあてにならなかったカーナビやテレビも今や、まともなものになりました。高速道路にもゴルフ場のようなカートの仕組みが整備されれば、運転 しなくても目的地へ連れて行ってくれる時代が来るはずです。20年後には自動車を取り巻く世界も大きく変わって行くはずです」と、自動車の行く末に目を輝 かせている姿は、本当に車が好きでたまらない少年のようでした。

Pick up Success in IBARAKI

“厳しい自動車販売業界で秘策を模索”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
この業界での起業は難しいだろう。整備にしてもメーカーの技術が進歩しており、コンピューターやテスターなどさまざまな設備が必要。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
自己資金もあったが、さまざまな金融機関から総額5000万円ほど資金を集めた。自動車販売には先行投資が必要。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
保守的な土地柄でユーザーは実車を見る傾向がある。しかし、時代はネットが主流なのでそちらに力を注ぐ一方、紙媒体も活用する。

これから起業する方への一言

“夢を持続して持つことで成功への道が開けていくと思う”

自分たちの時代は夢があった。良い車に乗りたい、きれいな女性とデートしたい、良いものを食べたい・・・そうした小さな夢があって、目の前の仕事が頑張ることができ、また、夢の実現のために努力を惜しまなかった。せめてそれくらいの夢は持っていてほしい。そうした夢を持続して持つことで成功への道が開けていくと思う。

■トレンドを生み出すのは若者たちだ
■消費税増税により業界が変わる
■20年後を見据えて、新たな戦略を練っていく工夫を



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