President file
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株式会社 ライツ
代表取締役社長  堀川 智也さん

「ありがとう」の言葉で福祉事業に目を向ける

「一燈照隅」を座右の銘にして、ひたちなか市の商工会青年部としての活動にも精力的に参加。平日は仕事に専念するも休日は「ほぼ家族サービスに費やす」というイクメンパパの素顔も。アウトドア大好き人間で、休みがあれば3人のお子様を連れてキャンプするという。その際には自慢のダッチオーブン料理を披露するというアクティブ社長。

Owners Company
株式会社 ライツ
TEL.029-202-2570
http://www.rights111.com
ひたちなか市高場319エンブレム103

若くして死別した母親の声に背中を押され
人材派遣から様々な事業展開を図る

 ひたちなか市を拠点に人材派遣の会社として成長する堀川社長の名刺には「ちょっと自慢できること」という欄があります。そこには何と「小学3年生の時、現金400万円を拾った」とありました。

 「友だちと下校する時に、横断歩道橋を渡らずに国道を横断して、その先に電話ボックスがありました。そしたら、その電話の下にカバンがあって、開けてみ たらお札がいっぱい詰まっていたのです」と、小学生だった堀川社長はびっくり。小学生の彼にとって大金が詰まったバッグをどこに預けて良いのか分からず 「郵便局へ持って行きました。そこでカバンを開けてもらって、持ち主が判明しました。その後、持ち主は菓子折りを持ってきましたけどね・・・」と、堀川社 長は屈託なく笑います。

 小学生時代にそのような強烈な体験をした堀川社長はやがて高校を卒業後、都内の経営の専門学校で簿記や経営などを学びます。学校卒業後、実家へ戻り人材派遣会社で働き始めました。

 「面接でスーツを着ていたのは自分だけで他の人は私服でした。また、自分がさらに別の会社で働くことになるという意味がその時やっとわかりました」と初めて人材派遣について理解した瞬間でした。

 やがて、堀川社長は「現場で仕事をしていて、担当の人は月に1回給料明細を渡すためだけに来ていました。なんて楽な仕事なんだろうと、自分から『その仕事をさせてください』とお願いしました」と、雇われる側から雇う人を扱う側へと立場を替えたのです。

 入社したのは全国大手の人材派遣会社。入社2年後、堀川社長は同社の営業グランプリでナンバーワンに輝く成績を収めるまでに実績を積みます。

 その成果もあって若くして土浦の営業所長にまで上り詰めた堀川社長ですが、人材派遣のノウハウを得た上司とともに会社を立ち上げ、独立することになります。

 さらにそこから堀川社長はスピンオフして現在の「ライツ」を立ち上げることになるのです。

 「独立したのは上司で今の会長である方とでしたが、許認可関係の日程もあり、私が先に会社を辞めて実質上の社長となったのです。当時は県南の方々の協力 もあり11人の株主に出資していただきましたが、私自身も多少資金を用意しました」と、堀川社長は会社設立当時の様子を語ります。

 しかし、事業は順調とは言えなかったようです。堀川社長は「当初は全くのゼロからのスタートでした。以前からお付き合いのあったお客様から仕事を頂くこ ともできず、少しずつ顧客を増やしていきました。資金は底をつき、苦しい時期を経験しました」と、創業当初の会社の産みの苦しみを振り返ります。

 だが、根っからの明るい性格の堀川社長は、そこでくじけたり、めげることはありませんでした。かつて、国内ナンバーワンになったという自負もあったので しょうが、本来の営業マンとしての実力を徐々に発揮。地道に企業の採用担当者や現場の役職者と膝を詰めて話し合いを重ねることで「人材採用支援」と「就職 支援」という本業で、見事V字回復を成し遂げたのです。

 「人材派遣の仕事は物を扱うのではなく、生きている人を扱うものです。ですからこちらの思い通りにならない難しさがあります。適材適所の人材を、と思っ てご紹介しても人と人の関係で難しい場合もあります」と、堀川社長は人材派遣会社の苦労を語ります。さらに、現在では派遣だけではなく、ほかの事業へも展 開を図っていきます。

 そのひとつが「介護事業」です。全国でフランチャイズ展開する「茶話本舗」に参入。定員10人の小規模施設で、アットホームな高齢者介護を支援するとい う事業です。「大きな施設を作るのではなく、一戸建ての家を借りてリホームして、そこでデイサービスや宿泊サービスを提供するものです。少人数の受け入れ なのでスタッフが丁寧に面倒を見ることができます。トイレなどそれまで車イスを使っていた人でも歩けるようになるなど、リハビリ効果も出ています」と、同 事業の進展に期待を込めます。

 ここは少人数制ならではのきめ細やかなサービスを受けることができる上、季節にあったリクリエーションなど小回りが利くサービスとなっています。ひたちなか市内3カ所の施設が連日フル回転しています。

 さらに同社は環境事業も展開しています。これは害虫の駆除を行う部門です。堀川社長はさらに、将来は障害者支援などの福祉への事業へ目を向けています。

 堀川社長のこれらの事業展開の原点は、20代で失った母親の言葉でした。常に堀川少年を見つめていたお母様は、勉強嫌いの子どもに対して「大丈夫。おまえは素晴らしいんだから」という言葉を常に投げかけてくれたそうです。

 それ以来、堀川社長は仕事が苦しい時でも、その言葉を胸に前に向かって歩いてきました。「これから親孝行しようと思った」矢先に母親と別れた堀川社長は、母親の言葉に対して「ありがとう」という返事を返し続けています。

Pick up Success in IBARAKI

“厳しい状況でも新しい分野へ視点を移すことも大切”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
私たちの人材派遣業界での新規参入は難しいと思う。現在、県内の同業者との連携を図っているが、どこも人材派遣業務には苦労している。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
設立当時、11人の株主で1000万円ほどの資金を集めたが、すぐに資金は底をついた。それでもやり続ける覚悟が必要だ。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
広告宣伝などは行わず、地道な営業活動で顧客を増やしていった。人材を求める企業担当者との信頼関係を築くことが、最大のセールスになっている。

これから起業する方への一言

“周りの人に相談することが大切だ”

まず、周りの人に相談することが大切だ。そして、起業する際にはいろいろ調べること。活用できるさまざま制度もある。それらを知らないでいるよりも、各種の補助金制度などを利用し、積極的に活用するべきことも手助けになる。また、独立するという際には腹をくくる覚悟で、踏ん切る勇気も大切だ。

■本業を生かし、他の事業展開も模索する
■物ではない「人」の扱いには最新の注意を
■「ありがとう」の言葉が最善の武器



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