President file
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株式会社ファーストステージ
代表取締役社長  飯村 真樹さん

地域企業としての使命感。
絆つなぐ新しいステージへ

高校生の頃から続けているというゴルフのほか、建築探訪や美術館めぐり、海外旅行、ドライブと多趣味な飯村さん。最近は船舶免許を取り、フィッシングボートに夢中。「360度海という感覚は自分を無にできるとともに、リスクの高い状況に我が身を置くことで、安全は自分自身で確保しなければならないという、陸上では忘れがちなことを再認識できます」。

Owners Company
株式会社ファーストステージ
TEL.029-225-6670
http://www.1-ie.jp
水戸市常磐町1-1-9 FSビル 2F

スタッフ、顧客、さらにその先へ。関わった人びとが
幸せをつかむための「舞台」を提供する。

 家づくりを通して顧客の人生と寄り添う、株式会社ファーストステージ。創業社長である飯村真樹さんは、建具などをつくる木工職人の長男として旧岩瀬町に生まれました。

 旧岩瀬町は近隣の旧真壁町同様に石材加工業の多い土地柄。家業を継ぐのが当たり前とされていましたが、飯村さんは違う考えを抱くようになります。 「どうせやるなら、てっぺんで働きたい」という思いでした。

 高校時代、アルバイトをしながら、家業もよく手伝っていた飯村さん。その経験の中、建築業界には職業によって上下関係があることを知ります。立派な父が「下職」として扱われる様子に釈然としないものを感じました。

 また、当時、昔ながらの家づくりがある一方、プレハブの家づくりも徐々に増え出し、木工職人の需要は先細りしてしまうとの危機感も芽生えました。

 そこで東京にある老舗の建築系専門学校へ進学します。「入るは易し、出るは難し」の学校で、卒業までに半数が脱落してしまうという厳しさ。どのようにし て突破したのか、さぞ苦しい学生時代だったに違いないのですが、飯村さんは「要領がよかっただけですよ」と控えめに振り返ります。専門学生時代も生活のた め、学業とアルバイトを両立しました。そのアルバイト経験から学んだこともまた大きな糧となったそうです。

 「大人とのつきあい方、力の入れ方・抜き方を教わったように思います。最近の若い人は大変真面目です。それは素晴らしいことで私も高く評価しています が、心配な点でもあります。バランスよく力を抜いて欲しい」と、仕事だけでなく、処世術まで指導する必要性を感じている様子です。

 さて専門学校では設計士を目指しました。「設計士は業界でも『先生』と呼ばれる。頂点だと思いました」と、「てっぺんで働きたい」という希望に向かって突き進んだ飯村さん。卒業後に2級建築士の資格を、その2年後、24歳で1級建築士の資格を取得しました。

 26歳で独立。設計事務所を設立しましたが、最初は設計の仕事などなく、事務所が飲食店街にあったことから、徐々に飲食店のリフォームを手がけるようになっていきました。

 ときには、直接業務とは関係ない仕事を引き受けることも。「人として間違ったことはあまり好きじゃない。信用してくれた人の気持ちに応えたい。一してくれたら二返す。それが当たり前だと思っています」。

 そんな中、新築工事の依頼が舞い込みました。設計士になり「先生」と呼ばれることが夢だったはずが、その仕事以降、気づけば新築住宅の工務店に。

 一方、工務店としての仕事をする中、業界の構造上の問題に気づきます。発注側は施主一人に対し、受注側は設計事務所と工務店の二者。ここに無駄や無理が 生じていました。そこで飯村さんは「工務店をやれる設計事務所」に大きく舵を切ることに。新しいスタイルの事務所の誕生です。

 そこからはいよいよ順風満帆かと思いきや、人の上に立つものとしての挫折もありました。それは社員の大量流出。「僕に人間力がなかったからですよ」と苦い表情が浮かびます。

 そうした危機も乗り越えて今年18期め。理想のかたちになりつつあるといいます。もちろん、日本の人口減少を見れば住宅需要の減少は避けられないと、必 ずしも楽観視しているわけではありません。飯村さんは今、2冊めの本を書いています。筆をとった動機は地域への恩返しだといいます。

 「まず目の前にいるスタッフが幸せになってもらうのが一番の恩返し。今回の本はスタッフに向けてのメッセージです。当社は結構厳しい会社。自分で飯を食 えるスタッフに育てたいと思っていますから、ラクではありません。しかし、スタッフが自由に成長していける会社にしたい。スタッフの後輩たちが先輩を見 て、あんな暮らしをしたいと思える会社。そんなイキイキしているスタッフを見て、この会社なら家を建てたいとお客様が思う会社。その家の子どもたちが就職 したいと思う会社。こんなふうに地域に根づいて、地域の人びとの幸せな自己実現の核となる会社になりたいですね」と本に込めた思いを教えてくれました。

 さらに今、飯村さんは非営利の人材育成プログラムを考えています。かつて「社会で揉まれて成長する」と言われたように、新人社員は数年の修業期間があり ました。しかし、今は企業にその余裕はありません。求人は「経験者のみ」。新卒には就職氷河期が続いています。そこで飯村さんは「経験者」を育成するため の機関を作ろうとしています。

 「『学校のあとの学校』です。専門学校では仕事の仕方は教えるけれど、仕事の取り方、作り方は教えない。私は仕事の取り方を教えたい。将来人口が減り、 高齢者が増えていくなか、国力は衰退していきます。このままではいけない。数少ない若い人たちの力を十二分に発揮できるようにしておかなくては」と今後の 抱負を語ります。

 「高齢者といっても、実際70歳でも働けますよね。育成機関を作れば、そこの先生になれます。年金+αを手にできますし、なにより生きがいを得られま す。今のスタッフたちが将来の先生候補ですよ。うちの会社、組織を使って、自分のたちの人生を楽しくして欲しい。その一翼を担えれば、それが私の目標で す」と、目を輝かせて今後の展望を教えてくれました。

Pick up Success in IBARAKI

“重要な情報を引っかけるための楔(くさび)を打つ。”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
茨城は土地が広くて安い。しかも、東京から近く情報がすぐに入る。そうした意味では地代に対する価値、が非常に高い。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
事前の準備。10年先の将来の見通しを立てる。そのためには広く情報をインプット。精読は不要。目を通すだけでもOK。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
WEBは活用しているが、ディスプレイ越しの情報は頭に残らない。紙媒体も重要。

これから起業する方への一言

“決断に必要なものはあなたの頭の中身”

「お父さんお母さんの言うことを聞くな」です。反抗しろ、無視しろ、ということではありません。参考意見として聞き入れます。しかし、決断は自分の考えで。父母の常識は当然ながら一世代前の常識です。今とこれからを知っているのはあなた自身です。決断に必要なものはあなたの頭の中身です。



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