President file
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イガラシ綜業株式会社
代表取締役  五十嵐 則夫さん

社業発展から視線は世界の交流へ

3児の父親。電設工事業の3代目として「あくなき発展と成長を目指したい」と語る。自身は都内在住で金帰月来の日々だが、仕事の後はほとんどがボランティア活動などに時間を費やす。子どもたちに会える日は少ないが、奥様からは「自転車の乗り方だけはあなたが教えてね」と念を押されているそう。

Owners Company
イガラシ綜業株式会社
TEL.0294-21-0830
日立市幸町2-9-2

花形営業マン時代を経て地元茨城に帰郷
一から実家の稼業を継承して社会貢献の道へ

 文系の地域政策を専攻して大学院を卒業後、五十嵐社長は大手の電機メーカーに入社。若手の営業マンとしてルートセールスに努めます。
「しかし、お客様にあいさつに行っても顔を向けてもらえないのです。
名刺をデスクの上に置いても、私がその場を少し離れるとデスクの上から私の名刺を何気なく落とされていました。
それでお客様がトイレなど席を離れたすきに改めてデスクマットの間に挟むなどして...そういうことが半年は続いたと思います」と、五十嵐社長は新社会人生活の始めから営業の厳しさを経験することとなります。


 見向きもされなくとも通い続ける日々。
しかしとあるきっかけから担当者がこちらに発注を決めてくれることになり、翌日から大量注文を受けることになったのです。
五十嵐社長は「それまで営業の売り上げでは200人ぐらいの営業マンの中でビリから数えた方が早かったのですが、いきなりトップ5に入る売り上げを記録したのです」と、社内でも注目の存在になりました。
しかも入社1年後にはトップの座を射止めます。


 しかし五十嵐社長はそれに驕ることなく、お客様に対して何ができるかを考え「とにかく出来るだけ商品を早く届ける。納期を絶対守るということを心がけました」と、大手メーカーでの経験を語ります。

 そんな東京時代の3年後、父親の達男さんの具合が悪いということで、急きょ現在のイガラシ綜業株式会社へと再就職し家業に入りました。
「ところが父親はピンピンしていて、だまされたと思いましたね(笑)」と、五十嵐社長は帰郷について振り返ります。


 父親の会社に入社したものの初めは肩書もない一介の営業マンからのスタートでした。
「もともと文系の私でしたから積算などできないのです。そこで昼は営業に出て、夜から先輩たちの積算をみて独学で学びました」と、自らに課せられた仕事に対する努力を惜しみませんでした。


 五十嵐社長はソフトな風貌と誠実な人柄の持ち主として、初対面の人でも気さくに接する魅力あふれる雰囲気を漂わせています。その人柄と真摯な姿勢で、多くの顧客の信頼を獲得することになったのです。


 それでもさらに自らのスキルアップのための努力も欠かしませんでした。
35歳から40歳になる間に国家試験に果敢に挑戦。電気、建築、管工事、消防、労働衛生などの国家資格を19個も取得しました。


 五十嵐社長は「社員にも資格獲得を勧めています。試験を受けるためには経費も負担しますし、取得すればお祝金も支給します。
資格によって本人の給与も上がることになりますから」と、社員の人材教育への投資を惜しみない姿勢を見せています。


 社業の発展に尽力する傍ら、五十嵐社長は社会貢献活動にも積極的にかかわっていきます。
商工会や青年会議所などのボランティア活動や地域貢献の一環として「ティーンズロックフェスティバル」を企画していきます。


 イベント企画時、ひたちなか青年会議所の理事長として重責にあった五十嵐社長は、上海万博を契機に日中韓の子どもたちの交流を深めたいとの想いで音楽でのイベントを画策。
今年は東日本大震災からの「復興からの旅立ち」をテーマにグルメ、花火、ティーンズロックアジア、ステージショーなどを含めた「茨城フェスティバル」として、一大イベントへと大きく開花し、1万1千人を集客するイベントへと育て上げていきました。


 やがてNPO法人の「国際事業推進事業」も立ち上げ、「大好きいばらき県民会議」や「日中友好協会」などの職責も果たすようになりました。


 五十嵐社長は「先代からの企業理念に『企業イコール地域貢献』というのを掲げています。そのため私自身もできるだけ積極的に地域活動やボランティア等に携わっています」と言います。
その企業理念は自社の社風にも反映されていきました。
自身が副社長時代から取り組んできた取り組みは同業他社の中では県内では初めて品質のISO9001、環境のISO40001、情報セキュリティのISO270001の取得認定になったのです。
この取得は、外部のコンサルタントにお願いするのではなく、社員たちが会社を挙げてマニュアルを作り取り組んだ成果でした。


 イガラシ綜業株式会社は電設関係の設備企業として創業者の祖父・義次郎さん、会長の達男さん、そして現在の則夫さんと続いてきた企業です。
3代目のトップリレーのバトンを引き継ぐ五十嵐社長。
自らの若き営業マン時代の苦労した経験と成功、さらにゼロからの再出発から経営者へと歩みを進め、同社も創業から64年という歴史を刻んでこられました。
五十嵐社長は「ゴミがあれば拾うし、汚れていればふきます。
そういうことが結果として成功につながると思いますし自分もそうでありたいと日々行動してます」と、社長として同社社員への模範を示しています。


 太陽光発電をはじめとした電気設備会社として、誠実に順調に走り続ける同社は、五十嵐社長のリーダーシップのもと、社会貢献と共に未来への成長が確信できる企業だと感じます。

Pick up Success in IBARAKI

“国家試験を取ることも社業発展に役立つ手段に”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
私は3代目だが、茨城には大手の電機企業さんがあり、太陽光発電なども更に多くのニーズが見込めることもあり、可能性はあると思われる。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
私は親の会社へ就職して初めから勉強した。資格も習得して社業のために尽くした。資格を習得することも必要だろう。そのための投資も惜しまないこと。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
人と人のつながりが大切だ。さまざまな社会貢献活動に参加することで仕事が広がることもある。ネットワークが広がり会社の印象も高まる手段になる。

これから起業する方への一言

“社会のために役立つ会社にならなければ会社の発展はない”

自分の会社の利益だけを追求していては駄目だ。純真な気持ちで社会貢献していこうと思えば会社の発展も望めると思う。中小企業でも税金を払っていれば良いのではなく、社会のために役立つ会社にならなければ会社の発展はない。いろんなコミュニケーションに参加して自分をアピールすることも必要だろう。

■実家の稼業を継ぐ意識改革
■資格取得が社員の幸せにもつながる
■社会貢献への気持ちを忘れない



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