President file
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有限会社ボレー
代表取締役社長  佐藤 正信さん

「オーボンヴィヴェール」シェフ。会社経営者としても活躍

水戸市出身。大学生の2子の父親。シェフとして自らが現場に立つ「オーボンヴィヴェール」は茨城のセレブ御用達の店として発展を続ける。趣味は食べ歩きで「お客様からあの店に行ってみたら」という情報を得れば東京などにも積極的に食べに行くという、食と味の探究者の一面も。より敷居の高くない新店の出店も模索中。

Owners Company
オー・ボン ヴィヴェール
TEL.029-244-9971
水戸市千波町2310
「オーボンヴィヴェール」シェフ。 会社経営者としても活躍。

茨城を代表するフレンチシェフとして君臨
多くの人材を輩出し、あこがれの存在感を示し続ける

  茨城県内のグルメ達を虜にして27年。佐藤社長は「オーボンヴィヴェール」を開いて以来、茨城のフレンチ界を牽引し続けてきた超有名シェフとしての存在感を示しています。
 水戸市出身の佐藤社長は大学に進学したものの、中退。友人の影響を受けて都内の料理学校へ転学します。佐藤社長本人は「不純な理由です」と笑いますが、 調理学校卒業時に「フランス研修制度あり」という文字に誘われて都内のレストランに就職します。その後、有名ホテルへ移り「フレンチのベースを学んだ」と 佐藤社長。


 佐藤社長20代の修業時代は、料理の道を目指す人々には必然となる様々な現場を渡り歩くことになります。フランス修業から帰った先輩と横浜の店を任され たり、雇われシェフになったり、「もう一度勉強しよう」と有名店や新スタイルのレストランなどで経験を積んで、自らの味を確立していったのです。
 やがてご実家の都合で帰郷。ひたちなか市内のビジネスホテルに入りますが「1年半ほどいましたが、当時から自分では独立しようと思っていた」と、水戸市米沢町に「オーボンヴィヴェール」を開店させたのです。


 「料金設定は高めだと言われましたが、オープン当初から多くのお客様においでいただきました。順番待ちで行列が出来て、お客様から『いつになったら入れ るんだ』と言われたこともありました。フレンチの場合、時間制限はありませんのでご予約していただかないと当然、お待ちいただくことになります」と、佐藤 社長の店は反響を呼んで、一気に水戸の人気店になったのです。
 佐藤社長は「当時は真新しいように映ったのかもしれませんが、自分としては自分でやってきたことを表現したい、当たり前のものを当たり前にやってきただけなのです」と謙虚に語りますが、佐藤スタイルは先進的なものだったのです。


 今でこそ、食材の産地などを明示しているお店は普通に見られますが「オーボンヴィヴェール」では開店当時から「嘘をつかない」という姿勢で食材や食器に 対しても「昔からどこの産地の食材で、作っている人の顔の分かるものを提供してきました」と、時代の先端を走っていたのです。
 しかも提供している料理に対しても「お客様の注文があった場合、決して作れないとは言いませんでした。もちろん食材がないときは別ですが」とお客様の希望に添える料理を提供できるシェフとしてのストライクゾーンの広さが佐藤社長の魅力につながっているのかもしれません。
 順調に存在感を示し、誰もが認める有名店となり佐藤社長の味を求めるファンの要望に応えるように、7年後に2店舗目を出店。その際に「有限会社ボレー」を設立。フレンチレストランが法人化を果たしたのです。


 佐藤社長の元、同店からも多くの料理人の逸材が独立を果たしていきました。「独立した人やオーナーシェフなど6人ほどはいます。ほかにも何人もいるかと 思いますが」と、27年間で佐藤社長の店から巣立っていった料理人は数えきれません。佐藤社長のシェフとしての味や料理に対する姿勢を学んだ人々が現在、 人気店として成功を収めていることが、佐藤社長のカリスマ性を高めていった一因でもあるようです。
 しかし、佐藤社長は現在の料理界に警鐘を鳴らします。「今の若い人は私たちのようにものを作って、お客様の喜びを得たいという人が少なくなってしまいま した。きちんと目的を持っている人は、フランスやスペイン、イタリアなどに修業に行って独立を目指しますが、今はそういう事も少なくなり、料理学校を出て も本格的な料理人を目指さない人も多い」と、佐藤社長は本格的なフレンチやイタリアンの道を目指す若者の減少に危機感を抱いている様子です。


 佐藤社長は「水戸は潜在的にグルメ人口が多いのです。しかも東京にも近いので、都内などで食事をされる方も多くいます。近年は水戸周辺ではフレンチなどの専門店が減少傾向にあります」と、食文化の衰退を懸念しているようです。


 佐藤社長の料理に対する姿勢は真摯で一本気です。なぜ、お客様は佐藤社長の味に引き寄せられるのでしょうか?
 「私はお客様のお顔を見てソースを作ります。初めてのお客様には好みを聞いてオーソドックスなものを提供しますが、常連の方にはそれぞれのソースをお出ししています。同じものをお出ししていても、すべてがオーダーメードなのです」。
 これこそ、佐藤社長の真骨頂です。さらに佐藤社長は「料理を提供するだけではなくお客様にすべてに満足していただきたいと思っております。料理だけでな く、器やお店の雰囲気、お客様との会話などトータルに対応できることが大切」と、料理店としての心得の秘訣を披露してくれました。
 「まだまだ現役として現場に立っています。子どもたちには後を継がせようと思いませんが、将来はもう一つお店を出したいですね」と、佐藤社長の味がさらに多くの人に提供できる日が期待できるかもしれません。


 フレンチ一筋で、まっすぐに道を外さなかった佐藤社長の後姿は、茨城県内外の料理人が追い続けるあこがれの存在です。今後も佐藤社長の活躍には目が離せません。

Pick up Success in IBARAKI

“やりたいという強い意志が独立への道”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
フレンチやイタリアンの店は減少している。時代が時代なのだろうが本当の専門店を出そうという意欲があれば成功するだろう。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
私は幸いに周りの協力があって出店できた。借金するにも保証人などが必要で、人間関係の信頼を築くことが大切だ。ゼロからでも独立は可能なはずだ。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
これといってプロモーションは行わなかったがオープン当初は多くのお客様に来ていただいた。それは口コミが大きな力になった。

これから起業する方への一言

“やりたいという強い意志を持つことが必要”

やりたいという強い意志を持つことが必要だろう。100%そろえてから起業するのは無理だろう。あと5年後、6年後に会社を興そう、資金がこれまで貯まったら起業しようという思いがあったら駄目だろう。その半面、私の場合、食に関することに集中した。どんな仕事でものめりこんでいく集中力が大切になる。



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