President file
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株式会社 郡司宝石
代表取締役  郡司 恵一郎さん

26歳で独立。他店との差別化で成長

水戸市出身で土浦日大高、中央学院大卒。親戚や地元の友人関係などいわゆる「義理買い」に助けられスタートしたものの、その後実直な性格と地道な商売で確実に顧客数を伸ばす。普通の宝石店にはない独特の店作りで、親しまれる。両親は公務員で、一代で現在の地位を築き上げる。

Owners Company
株式会社 郡司宝石
TEL.029-227-7788
水戸市浜田1-8-20

宝石を鑑定するための最適な環境を備え
地元に愛される世界で一つだけのジュエリーを提供する

 友人の留学経験がこの道に入るきっかけになるとは、人生の転機はどこに転がっているのか分からないものです。

 郡司社長は「大学4年の就活前に、ドイツ留学から帰ってきた私の友人が家に来て、そのお土産話を聞いていたのです。そこで『大英博物館で世界一でかいダ イヤモンドを見たよ』というのです。世界一でかいダイヤモンドというので、そこで興味を持って調べてみたりしたのです」と言うから驚きます。

 「そこから段々宝石の道に入ってきて、大学卒業後、地元に戻り宝石を鑑定する世界機関のGIAというところの日本校で勉強しました。地元の宝石屋さんで3年間働いて、26歳の時に独立したのです」と、郡司社長は自宅で宝石店を営み始めました。

 郡司社長は「友人がドイツ留学をして大英博物館へ行き、世界一大きいダイヤモンドの話をしなければこの道に入らなった。一体何なんでしょうね」と笑いますが、話す本人よりも周囲がびっくりするエピソードです。

 独立後は自宅で「外売り」と呼ばれるメーカーや問屋の商品を小売りする商売を始めますが、郡司社長はほかの宝石店とは違って、「自分のところで作って売る」という特注品のオリジナルの宝石を扱うようになります。

 自らデザイナーや加工屋さんを発掘し、お客様の注文を発注。世界で一つだけの宝石を提案し続けました。

 その結果「独立してすぐに独立資金のゼロが一つ多いぐらいの収入を得ました。そこで、このお金をどうしようかと考えていたところ、友だちから『宝石を買 うお客様の立場に立って考えることに使おう』と提案され、"無駄使い"をしたのです」と、郡司社長は宝石を買うセレブ気分を味わう体験をします。

 香港に買い付けに行き、アッパー層の生活を体験する中で、上質なサービスを学びます。若さがあったとしても、ともすれば蓄財に走りがちな一般人とは違う、経営者としての眼力と思い切った性格が今の郡司宝石の基盤作りに役立ったようです。

 やがて30歳で結婚。それを契機に現在地に店舗をオープンさせました。

 「最初は南町や銀杏坂で物件を探していたのですが、テナントでは家賃などの経費が掛かります。町中では駐車場などの問題もあります。だったら宝石を見るのに一番良い条件の今の地に店を構えました」と、郡司社長。

 「ダイヤモンドなどの宝石は品質を見るのにルースと呼ばれる裸石の状態が良いのです。加工品になってしまうと傷などが隠されてしまいます。うちではルー スの状態でお客様に見ていただきます。その場合、自然光を通して見ることが大切です。この店は南からの光が入り、明るい所から暗い所まで陰影を確認しても らえます。普通の宝石屋さんとは違う店作りにしました」。

 さらに、「洋服屋さんで赤い服を買ったとしても、外で着てみると同じ赤には見えないことがあります。宝石は輝きで価格も数倍違ってしまいます。直射日光 ではなくちょっと離れた基本光で見てもらうことで傷や輝きをみてもらうことが出来るのです。当初はお客様には宝石店には見えないよね、と言われました」と 言うように、郡司宝石店の店構えは独特の雰囲気があります。外からは塀で覆われており宝石店とわかりませんが、いったん店内に入ると南欧風の開放的な雰囲 気を漂わせています。

 「20年ほど前まで、変な店構えと言われました。でもバブルの頃から空間が見直されてきて、違和感を持たれるようなことはなくなりましたが、基本は宝石を見るために最適な条件を備えているのです」と、郡司社長は店作りも宝石を第一に考えていたのです。

 また、郡司社長は「ブライダルで訪れたお客様が写真を撮りたいというので、庭もそれに合わせた庭作りを行いました。妻も元々花が好きだったので...」と、 ブライダルの前撮りに合わせたガーデンを設置します。こうしたゆるやかな空間の中、お客様が安心して宝石の選択や相談をすることができるような造りになっ ています。

 「ここで娘たち二人も育ちました。幼い頃から店舗内で育てたのですが、それがかえってお客様に安心と信頼を得る事にもなりました」と、二人娘の成長にも思いを寄せる郡司社長。

 現在はブライダル、一般特注品、買い取りの3本柱が同社の売り上げを占めているそうですが、成長の原動力は営業マンを置かないというファミリー経営にあります。

 小さな子どもたちが店内で遊び、奥様が経営を支え、店舗はまるで自宅のリビングルームのような空間。ほかにはない理想的な宝石店を実現させたのです。

 しかし、13年前に奥様が大病を患い九死に一生を得ます。そこで、奥様は「第2の人生なので」と地元の学校などのボランティア活動も始められます。ま た、郡司社長自身も昨年から水戸南ロータリークラブを通じて知的障害者の施設の理事に就任し、福祉関係のボランティアとして社会貢献に尽力しています。

 奥様と二人三脚で築き上げてきた「郡司宝石」のブランドですが、残念なことに今年4月、奥様は病に倒れ天に召されてしまいます。

 そんな悲劇にも、郡司社長は前向きな姿勢を崩しません。インタビューの合間にもひっきりなしに訪れるお客様に懇切丁寧に対応する「郡司スタイル」は、泉下の奥様が温かく支えているように思えました。

Pick up Success in IBARAKI

“利益追求ではなく社会貢献も必要”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
宝石業界はそれまでのアッパー層から一般市民へと身近なものになった。なので「外売り」から「店売り」の独立は可能だ。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
実家から3年間宝石店に務めて資金を貯めることが出来た。創業時には仕入れなどの資金が必要だったが、親の援助などを含めて独立できた。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
地元新聞に記事が掲載されたら反響が大きかった。様々な媒体に広告を掲載する必要性を感じた。営業マン一人よりも広告の方がコストは安い。

これから起業する方への一言

“必ずしも街中が良いとは限らない”

宝石店というと街の中の方が良いと思われがちだが、テナント料や駐車場などの経費を考えると必ずしも街中が良いとは限らない。私は現在地に店を作ったが、経費的にも宝石を見てもらえる環境としても結果的に良かったと思っている。店にかける諸経費が低く抑えることができて、利潤を追求することなくお客様へのサービスに集中できた。



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