President file
70

ジングコーポレーション有限会社
代表取締役  軍司 直樹さん

世界観を徹底的に投影し、
客が喜ぶ空間を創出

友 だちが脳梗塞で倒れたことをきっかけに「死ぬまでにやりたいことをやろう」と、狩猟とトライアスロンを趣味に。トライアスロンの愛好者には経営者が多いと か。「マネジメント力が問われる競技です。実際は思いどおりにはいかないけれど、管理するのは自分一人、ゴールが決まっているということも私にとっては魅 力的です」。

Owners Company
ジングコーポレーション有限会社
TEL.029-225-6918
水戸市末広町2-2-29

仕事に対する高い精神性まで含めた日本の飲食業を
水戸からバンコク、さらに東南アジア全域へ

 一風変わって芯のある料理店。ジングコーポレーションはそうした店舗を水戸市を中心に次々と生み出してきました。

 同社は茨城県産の食材にこだわった鴨料理専門店「常陸国 穴とら屋」、地鶏を紀州備長炭で焼き上げる「鶏料理 桐」、鉄板料理を楽しめる「TEPPAN&BAR ガムボールバー」など現在、水戸、バンコクに5店舗を展開しています。

 軍司社長が最初の店をオープンさせたのは1995年、23歳のときでした。訳あって開業資金もないまま、異例のスタートだったといいます。

 「私は運が良かったと思います。同世代は団塊ジュニアでボリュームが多い。しかも、水戸の同世代は実家暮らしのため可処分所得が多い。この同世代をメインターゲットにしました」と軍司社長は自分と同じ年代に狙いを定めた店舗を作り上げます。

さらに、軍司社長は「ファッションや音楽、自分がいいなと思うことがそのまま同世代の好みと同じ。自然と多くの若者に居心地のいい店になりました。」と謙虚に創業当時を振り返りました。

  とはいえ、運を味方につけるには、それだけのことをしなければなりません。軍司社長は「生意気なようですが、いい店とは1000ピースのパズルと同じだと 思うんです。1ピースでも違えばパズルは完成しません。例えば、灰皿もパズルの1ピース。たとえ小さな灰皿があっても店の雰囲気にそぐわなければ、残りの 999ピースを台無しにするんです」と、こだわりの店づくりの大切さを強調します。

 それはタイに出店した「地鶏家 けんぞう」においても同じ。同店は現在、タイ駐在の日本人に欠かせない店舗になっているそうです。

  海外進出を果たした軍司社長はさらに「実際に、バンコクでの事業は規模を拡大させます」と述べ、業容拡大に積極的です。海外に進出した動機について軍司社 長は「タイの富裕層にも日本食が浸透していく土壌はすでにできています。日本食をローカライズさせつつも、ヘルシーなイメージを押し出しながら、正統派の 日本食の味を根づかせていきたいです」と、日本の食文化の普及を水戸から世界へ発信していく狙いがあったのです。

 また、タイへ進出した理由について「バンコクは東南アジアのハブ空港です。多くの企業が集まり、人が集まります。ミャンマーやベトナム、カンボジアなどタイを足がかりに広げていきたい」と、軍司社長はタイという土地の有利性を解き明かしてくれました。

 軍司社長は「東京へは進出しないのかと聞かれますが、タイの方がワクワクしています。それに、お客様に楽しんでもらいたいという理念に、日本人も外国人も関係ありませんから」と明快に語ってくれました。

  「最近はJETROの後押しで海外に企業が進出しようとしている。茨城の企業同士が手を組んで、物単品ではなくパッケージされた文化として海外に輸出した い。当社の店が、ビジネスパートナー同士がコラボレーションして魅力を発信しあえる場所になれればいいと思います」と軍司社長は自社だけでなくオール茨城 の結集も目指しているのです。

 軍司社長は特に日本の飲食業を高く評価しています。「日本の飲食業はクオリティが高い。そもそも仕事に 対 する意識が高い。やってもらってうれしいことをやりなさいという感覚は世界的に稀です。飲食業を通してこの日本の文化を伝えたい」と、食とともに日本の サービス文化の発展も"輸出"したいと考えています。

 軍司社長のもとを巣立って店を構えた従業員は10人ほどいました。彼らは皆、軍司 社長と同じ思いの継承者です。「各店の店長が素晴らしいんですよ。私の考え方や物の見方は伝えますが、これといって教育らしいことは(笑)。でも、私と同 じような考え方を持った人を採用しています」と通じ合える仲間を採用しているそうです。

 軍司社長が採用の際に必ず聞く質問は一つ。「『壁に当たったときどうした?』。その答えに正解はないし、結果も問題ではありません。要は逃げ出さずに壁に立ち向かったかどうかです」と人を見分けるポイントを示します。

  さらに「人間には自分が成長するための発達課題があります。自分と向き合うとつらい。いかに無能でちっぽけかを思い知る。でも、逃げずに立ち向かうからこ そ解決策が見えてくる。一歩一歩進んでいくしかありません。そうした経験が私たちの共通言語になります」と、人間として成長していく道のりを指示してくれ ました。

 軍司社長は自らの発展課題について「経営者としてトータル的に俯瞰する視点。いや、発達課題ばっかりかな。聖人君子を目指しているわけじゃないけれど、まだまだです」と成長の歩みはまだまだ続くようです。

  現在41歳の軍司社長。若き創業者も不惑の年を迎えました。「40歳を超えた今、振り返ると、30代は自分の力を勘違いしていた。天狗になっていました ね」と、謙虚に語ります。軍司社長は「50歳になったらもっと高い視座から今を見直すだろう。世の中のおかげではあるが、世の中のせいじゃない。100% 自分の行動の結果です。これから自分の実力をつけてやっていかないと」と、冷静に未来の自分を見つめています。

 どこまでも生真面目な軍司社長。最近は、店舗に出ることはないとのことですが、その生き様は店内のそこかしこから伝わってきました。

Pick up Success in IBARAKI

“流行の後追いをせずに誰もやらないことをやる。”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
茨城以前に日本に生まれたというだけでラッキーです。世界で衣食住の足りている人口は約5億人だそうですが、ほとんど日本人はそこに含まれると思います。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
精神的余裕が不可欠だと思います。余裕をもたらしてくれるものの筆頭は資金。例えば、向こう3年間、たとえ赤字でも暮らしていけるだけの預金。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
やっぱりサクラサクです(笑)。冗談ではなく、創業当時からタウン誌など紙媒体をよく使いました。今はHPの他、FBやツイッターなどWEBも使っています。

これから起業する方への一言

“みんなが右へ行ったら左へ行く。”

みんなが右へ行ったら左へ行く。左へ行けば真っ暗でレールもない。しかし、競争相手もいません。仕事は「余人をもって代えがたい」働きをしなければ、流され るばかり。参入障壁が高く、誰もやっていないことは不安ですが、ライバルがいなければ価格競争に巻き込まれず、唯一にして最上位の企業となれます。

■ 俯瞰して客観的に判断する
■ コンセプトの具現化は妥協しない
■ 誰もやっていないことをする



写真を右に1つ進む

写真を左に1つもどる