President file
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株式会社 フレンドリーP&Mステーション
代表取締役  藤岡 和正さん

低予算住宅を提案。
夢のマイホームを提供する

那珂湊で2代続いた魚屋の長男だったが、建築業へと転身。設計士として独立後、ハウスメーカーへと業種を拡大する。年間30棟ほどを手掛け、ご自分のご子息を英才教育し、現在専務に育て上げる。歴史や美術品に精通し、今は奥様と愛犬2匹と暮らす。

Owners Company
株式会社 フレンドリーP&Mステーション
TEL.029-263-2927
http://www.fpms.jp/
ひたちなか市北神敷台6-12

電話会社に入社したものたった3日で退社
26歳で設計事務所を立ち上げ、ハウスメーカーへと発展


 那珂湊出身の藤岡社長は地元の那珂湊一高(現・那珂湊高校)を卒業後、電電公社(現・NTT)に入社されました。

 しかし、3日で会社を辞める事を決断したと言います。

  「東京千代田区の庁舎内には全国からの電話の発着信を行う機械がズラリと並んでいて、『これは人が機械を動かすのではなく、人が機械に使われてしまう』と 感じたのです」と、すぐさまひたちなか市内の当時県内有数の建設会社へ転職。その後さらに設計事務所へ転職し、設計の道へと歩み始めたのです。

  「昔の設計事務所というのは完全に徒弟制度そのものでした。一番最初にやらされたのは線を引くこと。ただひたすらに線を引くだけ。一番頭が柔軟な時期に単 純なことばかりやらされるのです。その後、先輩の仕事を見て、一部分だけ教えてもらって、徐々に一軒の家を任されるようになるのです」と、設計事務所での 修業時代を話してくれました。

 設計事務所の業界では「ムショ暮らし何年」という言葉があるそうです。「ムショとは設計事務所のことで す。ムショ暮らし6年ぐらいになると、そろそろ独立する頃合いなのです」と、藤岡社長も昭和48年に26歳で独立。自宅前に「藤岡建築設計事務所」を構 え、若き設計士として社会の海へと漕ぎ出し始めました。

 「設計という仕事は建築業の中でも一番儲からない業種です。たとえ1000万 円 の仕事を受けても、構造計算や設備関係など外注する部分が多く、30~40%はそれらの支払いになってしまいます。しかも設計が完成するまでに約8か月は かかります。ですから、数をこなさなくてはならないのです」と、藤岡社長は無我夢中で働き続けたそうです。

 数多くの設計の中でも特に藤岡社長が手掛けたのは調整区域内でのガソリンスタンドなどの設計で、許認可業務など煩雑な作業を伴うものが多かったそうです。行政とのやり取りや多くの規制の中で、つらい仕事も数多く経験していきます。

  「日本は欧米などと違って、あらゆる規制が多過ぎます。法律で手足を縛っておいて、さあ、デザインしてみろ!と言われているようなものです。自由な発想を 生かすことが出来ない中で設計しなくてはなりません。欧米では設計士はアーティストと扱われますが、日本の設計士の地位は低いものです。設計士は常にデザ イナーなどにも負けてしまうのです」と、日本の設計業界を憂います。

 しかし、そんな中でも藤岡建築設計事務所は順調に業績を積み上 げ、 平成9年4月には不動産を扱う「フジオカアースプランニング」を設立。さらに同年9月には建築を行う「藤和建設」も立ち上げ、平成20年にはこれら設計・ 建設・不動産業を統合した「フレンドリーP&Mステーション」を設立させ、総合ハウスメーカーとしての基盤を作り上げました。

  「設計士は良いものを作りたいと常に考えています。そうすると当然、お客様の予算が増えていってしまいます。そのようなジレンマの中、私どもはお客様の満 足を第一に考えていきたいと思っているので、低予算でも最高品質の住宅を提供しようと考えました」と、昨年4月には藤岡社長自身が2年の歳月をかけて完成 させたオリジナル住宅を提案しました。

 県内初の「家賃並みの予算で購入できる住宅」という低予算住宅を提供してきた同社。これらのオ リ ジナル住宅も10バージョン、300種類の住宅を用意。しかも、土地、建物、外構、銀行、諸経費、登記代などすべて含んで1200万円台から住宅を提供す ることを可能にしています。

 「一番高い予算の住宅と一番安い予算の住宅を求めている人の層の需要は競合メーカーがないので無風状態なのです。ですが、安かろう悪かろうではだめです。低価格でも高品質住宅を実現させました」と、藤岡社長は胸を張ります。

 同社の自慢は、信頼できる職人集団が藤岡社長のもとに集まっていることです。「信頼できる大工さんがいて、出来ることなのです。これが私の一番の財産です」と、藤岡社長は絶大な信頼を寄せた職人さんたちに感謝の言葉を述べました。

 設計事務所からハウスメーカーへと成長を続ける同社ですが、設計士としての自負を忘れない藤岡社長。その原動力は趣味の骨董収集にあるようです。

 藤岡社長は「骨董収集はそのものの美しさが分かるまでには家1軒分くらいのお金がかかります。そして、その美しさが分かるとさらに奥へと入り込んでしまうのです」と骨董趣味の醍醐味を語ります。

  「実は設計という仕事は美術品などと深くかかわっています。設計士は常に美術館や展覧会などに足を運び、絵画や陶器などの美術品に触れて、自分なりに消化 しなくてはいけない。これは、設計士ばかりではなく、お客様にも言えるのですが、美術品などで本物を見極める力をもってもらうことで、見た目に惑わされな い『本物の家』をきちんと見て選んでほしい」と、藤岡社長は美術品の鑑賞を通して、本物の目を育ててもらいたいと力説します。

 大手ハウスメーカーによる寡占化が進む住宅業界で、低予算と高品質住宅で一層の輝きを増す同社を率いる藤岡社長の動向は、今後も目を離すことができません。

Pick up Success in IBARAKI

“信頼は会社の形ではなく
「完成した建物」に対するお客様の満足にある”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
大手ハウスメーカーや中堅業者が競合しあい、一部の会社の寡占状況が続いている。時代は大きな変革期を迎えていて、個性を出すことが必要。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
私の場合、全く何もない状態からのスタートだった。ただ、起業するには家族がいなくてリスクの低い独身のうちにと思っていた。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
ポスティングのほか雑誌、新聞、放送などのメディアを利用しているが、どう表現してお客様に伝えるかが課題だ。これが一番の悩みどころ。

これから起業する方への一言

“自分の一生に大きな夢をもってほしい。”

今の若者は幼いころからなんでも与えられているので、夢がなさすぎる。自分の一生に大きな夢をもってほしい。自分は昔勤めた会社の社長が乗っている車にい つか乗りたい、という夢を持っていた。また、自分には資質がないと思っている人も多いが、資質がないことも大切な資質だ。それを生かすことを考えよう。

■設計士は常に柔軟な発想を持ち続ける
■最低の予算でも夢のマイホームを実現させる企業努力
■本物を見極める目を育てる



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