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新日本工芸株式会社
代表取締役 大曽根 功さん
社寺には欠かせない
縁起物のトップメーカー
生粋の水戸っぽの大曽根功社長はロータリークラブでも活躍。社会奉仕の精神は社外でも実践する。趣味は「下手の横好きのゴルフ」。「日本人は潜在的に信仰心を失うことはない」と話す。
- Owners Company
- 新日本工芸株式会社
- TEL.029-251-0997
- http://shinnihonkogei.co.jp/
- 水戸市河和田町3891
お守りやお札は日本人の精神的拠り所。
2万種類ほどある「お守り」を丹精込め手作りし、全国の社寺へ。
水戸がお守りやお札など縁起物の産地であることは意外に知られていません。水戸市周辺だけでも中小30社余りが縁起物の製造に関わっていますが、その中で北は北海道から南は沖縄、さらにはアメリカ・ハワイまで約1400社寺にお守りや木札、破魔矢、おみくじなどを納めているのが「新日本工芸」です。
昭和50年の会社創業時に入社。以来、36年にわたってこの道一筋。50歳の時に社長なってから同社を率いて15年が経過しましたが、新商品開発など今も第一線に立って、現場に指示を与えています。
「入社当時は、九州、四国などを担当していました。当時取り引きいただいていたところはなく、文字通りゼロからの出発」と入社当時を振り返ります。「昔はどこも訪問すると奉納されているお酒を勧められ、しかも九州などでは焼酎をストレートのまま飲まされました。旅館などに泊まると、
お守りを作っている会社だと話すと、『福の神が来た』と言われました」と懐かしみます。
取引先ゼロから今日までの成長の秘密は、信仰に頼る参拝者の思いに応える企業精神と時代のニーズに合わせた商品開発の努力が隠されています。
お守りなどの素材は木、竹、和紙、石が原則です。日本古来の素材を使い、社寺それぞれのオリジナルのものを作り上げていきます。
「昔は赤と紫だけでしたが、現在はカラフルで参拝者の要望も多様化しています」と、言います。
しかし、簡単なお守りでさえ作業工程が最低5段階は必要で、しかも願い事や御利益に応じてひもの色や鈴なども変えなければなりません。その種類はなんと2万点に上り、精密で根気のいる作業が欠かせないのがこの仕事。しかも、製造業が海外へと進出していく中、日本人が丁寧に手作りしなければならない産業として、日本には欠かせない産業でもあるのです。
「一つひとつ思いを込めて作る事。貼り合わせ一つでも微妙にずれると商品になりません」とその難しさを語ります。さらに「時代のニーズに合わせた商品開発をすること」を基本に、縁起物のトップランナーの地歩を固めてきました。
現在は知的財産権を守るために、商標登録、特許登録などを進め、住宅事情に合わせた立体的なお守りやこれまでにはなかった横型のお守りなども開発しました。お守りの願い事も「就活」「仕事守」など時代に合わせて、現代人の願いを叶えるお守りを次々と提案しています。
仕事の繁忙期は毎年9月から翌年1月までがピークです。その時期はまさに猫の手も借りたいほどの忙しさです。しかし、つかの間の休みが取れる3月上旬には、社員研修として海外の宗教遺跡などを訪れる社員旅行も続けています。
「おもちゃを作っているのではない。日本人の宗教心の原則を踏み外すことなく、日本人の原点を皆さんに伝えていきたい」と大曽根社長は語っています。