President file
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株式会社 大縄林業
代表取締役  大縄 守さん

木材を知りつくした会社がつくる家づくり

大縄家は元佐竹藩の家臣で、常陸太田市がルーツ。茨城と秋田に残る姓で、由緒ある家柄。製材関係を中心に関東一円に顧客を抱える県内では有数の企業として業界では知らない人はいない存在。社長は地元の杉崎芸能保存会でも活躍。太鼓を叩くなど伝統芸能の後進指導にもあたる。

Owners Company
株式会社 大縄林業
TEL.029-259-2135
http://www.ohnawa.co.jp/
水戸市杉崎町1753-4

幼少期から山に入り、木材に親しむ。
グループ5社で木材需要のすべてに応える

祖父の代から林業に関わってきたという大縄家。父親の故武雄さんが昭和43年に立ち上げた「大縄林業」は創業わずか44年にして、グループ会社4社を含めた県内有数の総合木材会社へと発展してきました。

  大縄社長は「子どもの頃は山で木を切り出す『山出し』という仕事を手伝いました。当時は車もなくて、人力で木を切り倒し、馬に曳かせる『こびき』というや り方が主流。それを製材所へと運んでいたのです」と幼い頃の思い出を語ります。肉体労働で鍛えられたその体は「力だけは誰にも負けなかった」というよう に、頑強な肉体と強い精神力を養ったようです。

 小学生時代から父親の仕事を手伝っていた大縄少年にとって、父親の仕事を継ぐのは当然と思っていたとい言います。水戸工業高校を卒業すると同時に大縄林業に就職。製材の仕事に一から取り組むことになったのです。

 「この仕事は危険とも隣り合わせの仕事です。3年やってやっとスタート台に立てるようなもの。それでもまだ1人前とは言えない。経験がなにより大切な職業なのです」と、熟練するためには長い時間を必要とする忍耐力が欠かせない仕事です。

 「経験を積むことで、木を見ることが出来るようになります。現在は主に輸入材を扱うようになっていますが、今でも丸太の買取には私自身で行って、ちゃんと確認しています」と、千葉県の港に木材が運び込まれると、大縄社長自ら足を運んで検品することを欠かさないそうです。

 丸太は1本5万円から100万円ほどする高価なものです。製材の途中で曲がってしまい使い物にならない「あて木」と呼ばれる不良品も買ってしまうこともあります。それだけに豊富な経験を積んだ大縄社長の心眼が木材の良し悪しを見極めるのです。

  木材が住宅になる過程には私たちの知らない世界があります。北米やヨーロッパなどから切り出された丸太は商社の船によって日本まで運ばれ、卸問屋を経て大 縄林業のような製材会社に引き取られます。そこで住宅建築用に製材されたり加工されて、木材市場へ運ばれて、そこから建築現場へと到着するのです。

長い道のりを経て、我々の住宅の木材は成り立っているのです。

  「外材を中心に扱っていますが、白系のツガ材の取り扱いは関東ではナンバーワンになりました。12~13年前から機械化も進み、今では加工などはすべてロ ボットの作業になりましたね」と、時代の波に乗って、工場の機械化も推進。減少傾向にある同業他社を尻目に発展の道をたどっているのです。

  大縄社長自身は4人兄弟の次男でした。しかし、長男の大縄良夫さんは「独立したい」と「大縄林業原木株式会社」「木材リサイクル工場」を設立。木製パレッ トや梱包加工品を製造したり、県内有数の産業廃棄物木材中間処理施設に育て上げました。このため、父親の武雄さんが亡くなった後を、大縄守社長が引き継ぐ ことになったのです。しかし、男3人女1人の大縄兄弟はそれぞれに大縄林業グループの発展に寄与。血の繋がった大縄家の強い結束で、すべてが循環するシス テムを構築してきたのです。

 原木の切り出しから製材まですべての行程を知り尽くした大縄社長は「オオナワフォレストリーホーム」という住宅会社も設立。製材会社ならではの独自の流通システムを作り上げ、ほかでは実現することのできない高性能の木材を使った住宅が提供できるようになりました。

 住宅建築では「イシンホーム」にもフランチャイズで加盟。地元、内原イオンそばには住宅展示場も開設し、優良住宅の提供へ向けて大きく羽ばたいています。

  「今はコンピューターのCADを使ってロボットに指示を送り、自動でプレカットすることができるようになりました。これで大工さんが現場でやっていた作業 の手間が省くことができ、さまざまな顧客の注文に応えることができる時代になったのです」と、大縄社長は製材所の進化を解説してくれます。

  業界の将来については「今は高気密住宅で木が痛まないような技術が確立しています。そのため外材が扱いやすく人気があります。しかし、日本の風土、気候に 合っているのは本来なら日本の木材なのです。戦後植林された杉などは伐採の時期を迎えているのですが、林業に携わる人材が育成できていない。日本の木材は 不当に扱われているのです」と林業の将来に警鐘を鳴らします。

 「業界自体は少子化などの影響があり、需要は減るでしょうが、木がある限りなくてはならない仕事です」と大縄社長はきっぱりと言い切りました。

 幼小時代から木に慣れ親しみ経験を積み重ねてきた大縄社長は、今も直径1メートルになるかと思われる丸太の製材の現場で機械を操作しています。社長の本当の椅子は事務所内ではなく、製材所の一番最初の機械の操作盤の前の簡単な椅子が定位置でした。

 木と向き合い、エンドユーザーに思いを描く大縄社長の技術と経営法はこれからも木と同じように年輪を重ねていくようです。

Pick up Success in IBARAKI

“これで良いとは思っては駄目”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
この業界では難しいかもしれない。でも伐採などの需要はあると思う。住宅地での木の伐採は技術も必要だが、意外に需要があるのでは?
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
一時は成功したようにみえても、そこで立ち止まってはいけない。周到に考えることが大切で、考えが浅いと失敗する。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
ハウジングではチラシを配布したりする。製材業の業界では口コミがすべて。市場から信頼を獲得することが大切だ。

これから起業する方への一言

“継続するために常に考えている”

何事も、これでいいと思って満足していては駄目だ。自分は父親の会社を継いできたが、継続するために常に考えている。継続には相当の努力が必要だと肝に命じてほしい。地元だけに目を向けるのではなく関東一円など広く目を向けて欲しい。若い人は良い方向ばかりに目が行ってしまいがちだが、このような仕事もあることに気付いて欲しい。

■常に考え継続の努力を怠らない
■日本の林業には後継者が必要。そのチャンスがある
■積極的に最新技術を取り入れる



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