President file
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有限会社 ホームシック
代表取締役  上田 修一さん

若手スタッフの感性を信じ、
豊かな生活を提案し続ける

東京生まれ。茨城中学、緑岡高校から東京経済大学卒。現在53歳。29歳に水戸で事務機器販売で独立。その後、業態転換して、アンティーク家具販売を開始。 現在は国内のデザイナー家具を中心に展開。人気を博す。趣味は美術館巡りや読書。それも仕事につながるものばかりで、「B面は持っていない」と話す。

Owners Company
有限会社 ホームシック
TEL.029-259-6881
http://www.homesic.com/
水戸市杉崎町1761-1

ローコスト、組立家具に淘汰される家具業界
デザイン性と素材の良さで、成長を続ける

上田社長は都内の大学を卒業後、事務機の営業を経験。さらに29歳の時に水戸へ戻り、独立し、引き続き事務機の販売に携わっていました。しかし「事務機は 進歩が早くて、個人でやっていると遅れていくばかり。その進歩について行けずに悩んでいたんです」と、上田社長さんは「HOME SIC(ホームシック)」立ち上げまでの経緯を語ります。


「中学、高校の同級生が都内でインテリア家具の販売をやっていて、彼との共同で、現在の店を立ち上げました」といいます。

 その友人とは、東京・目黒の家具・インテリアの人気店「karf(カーフ)」の島田雄一社長でした。
「ホー ムシック開店当初はイギリスのアンティークやアメリカのユーズド家具などを中心にカーフのオリジナル家具も扱っていました。この立地は水戸ICにも近く、 街にも近い場所で、栃木、群馬県や福島、いわき、郡山など広い範囲から多くのお客様が立ち寄ってくれました」と成功への足掛かりを得ていきます。

 アンティーク家具販売などはそれまで都内などに限られていたこともあり、上田社長にとって「東京でしか見られないようなインテリアショップを茨城にも作りたい」という思惑がズバリと的中したのです。

  「家具やインテリアは嗜好性が高く、お店には多くの"家具好き"の方が足を運んでくれました。"家具好き"のお客様にとって、金額は関係ないのです。今で は身近になったロフトや東急ハンズなどは当時、東京へ行かなければならない時代でしたから」と時代背景もあったようです。

 「プラスワン」や「私のカントリー」などの全国版の雑誌にも掲載されたことにより、感性豊かで敏感な客層による口コミも広がり、「水戸のHOME SIC(ホームシック)」は確固たる存在になってきたのです。

 しかし、「家具は耐久消費財。一度行き渡ってしまうと、お客様の購買の動きが鈍くなります。家具にも流行があり、今は9割方は新しい家具を提案しています」と上田社長は当初のスタイルにこだわることなく、時代の変化に柔軟に対応していきました。

  「家具に使用されている材木もパイン材からウォールナット(クルミ)、オーク(ナラ)、チェリー(桜)などへ流行も変化してきました。9・11前頃までは 家具においても50代、60代の古き良きアメリカブームがあったのですが。最近は北欧系デザインの家具が人気です」と上田社長は語ります。

  さらに「現在の家づくりやマンションなどのスタイルも変わってきていて、クローゼットなどが初めから作られている。いわゆる『箱モノ』と呼ばれる婚礼家具 などは売れなくなりました。しかもデザイン性のあるローコストの組立家具などもあり、既存の家具屋さんなど、事業を続けるのは大変な時代になりました」 と、家具業界の受難を説明します。

 「でも、家具は5万円のものは5万円、10万円なら10万円、20万なら20万円と値段に合った価値があるのです。高い家具はそれなりの価値があり、価格が異なるにはそれなりの理由が存在します」と、安易に価格の安いものを求めることに警鐘を鳴らします。

  「私たちは商品一つひとつの作り手の思いや加工技術など、お客さまが知り得ないストーリー性を伝えています。自分の買ったお気に入りの家具を楽しそうに 語っているお客様の姿を想像するとうれしいです。やはり生活の豊かさは良い物に囲まれていて成り立つものですから」と上田社長は家具が人々の生活の潤い創 出に役立つ利点を挙げてくれました。
会社としては10年前につくばにも出店。さらに震災前の2010年にはひたちなかにも新たなお店を開きました。

  「つくばは魅力的な街で、県北中心の水戸と県南中心のつくばの2店舗展開で、県内全域をカバーできたと思います。ひたちなかはローコストを考えた上で、水 戸とひたちなか二つの店で1店舗という考えに立っています。ホームシックでは自社で配送部隊も抱えていて、配送や設置まで行っていますので、全店で活用で きるのがメリットなんです」と、多店舗展開の理由を教えてくれました。

 「家具やインテリアの世界は一見華やかでオシャレなイメージを持たれますが、家具は重いし、実は重労働なんです。スタッフは18名いますが、平均年齢は20代後半から30代前半ぐらい」と会社としては若い人材が豊富です。

  「私は物が好きで、この仕事を始めましたが、今は家具だけを売るのだけではなく、ダイニングやリビングなど照明やカーテンなども含めた空間提案が必要で す。若いスタッフにはその知識を持ってもらっています」また「私の感性で商品を仕入れると自分の世代しかついて来ません。だからこそ、若いスタッフの感性 が必要です。ホームシックのコンセプトを大きく外さなければ若い人の感性を反映させることが必要なのです」と、積極的に若いスタッフのセンスや感性を活用 しています。
また、社員たちにはツイッターやフェイスブックといったSNSも積極的に活用するよう奨励しています。「昔はクチコミで広がるには時間が掛かりましたが、今では同じ感性を持った友人同士が簡単につながることが出来る。これからは販促ツールとしても必要」と言います。

 上田社長をはじめ、若い感性を含め、今後も質が良く、デザイン性に優れた家具やインテリアを提供し続けてくれる「HOME SIC(ホームシック)」の存在意義が薄れることはないようです。

Pick up Success in IBARAKI

“自分が関わり豊かさを実感してもらえれば”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
茨城は見えるところにお金を掛ける。見えないところにはお金を掛けない県民性がある。その県民性を見極めることが必要だ。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
資金の融資を受ける際にも、きちんとしたプレゼンの資料を作るために、自分がどうしたいのかを考え、事前に市場調査をするなど、しっかりとした準備が必要。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
昔はタウン紙などがなく、全国誌などに広告を出した。現在はインターネットの時代で無料で使えるものもあり大いに活用してくべき。

これから起業する方への一言

“いかによい物を残せるかを意識してほしい”

世の中に物を残せる人は少数だ。いかによい物を残せるかを意識してほしい。もちろん物を残すだけでなく、自分が関わった仕事で「心が豊かになった」と感じてくれる人が増えることが私の使命でもあり、喜びにもなる。起業する熱意だけでなく、バックボーンには常に自分は何ができるかという使命感を持っていてほし い。

■流行には柔軟に対応して本物を提供
■嗜好性の高いユーザーの要望に応える
■生活の豊かさは良いものに囲まれて生まれる



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