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有限会社 ベルワン
代表取締役社長  武中 みどりさん

働くお母さんに生きがいを、
専業主婦から起業へ


ご主人の転勤とともにひたちなか市へ転居。専業主婦から役所勤めを経て独立。セレモニーの司会業を中心に事業を拡大。社名の「ベル」は映画「美女と野獣」 の主人公・ベルから。外見にとらわれず本質を見極めている女性という意味。大の犬好きで、動物病院から保護犬を常に預かっているほど。趣味は古典を読むこ とで、先人たちの言葉に触れるのが好きと言う。

Owners Company
有限会社 ベルワン
TEL.029-271-3039
http://beru1.com
ひたちなか市東大島1-3-3

司会、研修講師、整体から託児所まで経営規模を拡大
将来は介護までを見据えて幅広く働く女性をサポートする

四国・愛媛県生まれで、京都育ちの武中社長が現在のひたちなか市に居を構えるようになったのは大手ゼネコンに勤務していたご主人の転勤によるもの。一時、地方のテレビ局のレポーターとして活躍した時期もありましたが、当時は、まったくの専業主婦だったといいます。

 「最初は茨城に馴染めず、落ち込んでいました。そうしたら、ある日、黄色い風が吹いてきて、中国の黄砂かと思ったら干し芋畑からの砂だった。その時に『しゃあんめい!』と思って、前向きになれたんです」と、この地で生きていくことに覚悟を決めたそうです。

  それまで「苦手だった茨城」でしたが、気持ちが吹っ切れた武中社長は子どもの幼稚園で、交通安全教室に何度か参加。これが武中社長の転機となりました。何 度か参加するうちに主催者から「今、市で新たな教育指導員の募集をしている、受験してみては」と声をかけられたのです。一念発起し見事合格、ひたちなか市 役所に入庁しました。「ど素人だった私がチーフに選ばれたのですが、素人だからこそ従来の考えにとらわれない指導ができると頼まれたのでしょうね。子ども に分かりやすいように、歌を採り入れたり、ミュージカル仕立てにしたりして指導しました」と語ります。

 その後、当時としては全国に先駆 けてチャイルドシートの導入やディベート方式を採り入れるなど、積極的に活動します。市報に連載した記事は1冊の本となり、交通安全教室を通して総務庁を 始め、埼玉、神奈川、栃木など県外からの講演依頼が殺到。もともとアナウンスの仕事をしていたこともあり、そのわかりやすく、やさしいトークが人々から多 くの共感を得ていきます。また、全国初の指導員のための指導書を作成するなど、全国的にも注目を集める存在になりました。

 そのような公務員生活を離れ、独立したのは平成10年のことでした。すっぱりと役所勤めを辞め、独立創業への一歩を踏み出していきました。

 武中社長は「事務所を借りようにも不動産屋さんには相手にされませんでした。女性には閉鎖的な土地だったんです。」と、女性起業の苦労を語ります。そうした風潮にも負けず、武中社長は独自の手法で経営してゆきます。

  当初の事業内容はセレモニー司会やカルチャーセンターの「話し方教室」の講師などでした。初めての社長業でせわしい日々を送っていた時のことです。「当 時、事務所のビルの1階には喫茶店があって、何人かの企業経営者さんたちが優雅にお茶をしていて、『いつになったら、私もあのようになれるのかな』と思い ました」と、武中社長は創業時の忙しい日々を話してくれました。

 「会社を法人化させるにも何も分かりませんでした。分からないことは商工会議所に出かけ、すべて教えてもらったのです」と武中社長は積極的に行動。「茨城の方は教えて欲しいと頼むと、一から丁寧に教えてくれました。」と言います。

 やがて事業は司会業から企業研修会の講師、イベントのプロデュース、整体院、整体スクール、託児所など事業を発展させていきました。それは「必要に迫られて」と語ります。

 「もともと自分がものすごい肩こりに悩んでいて、東京まで整体に通っていたのです。でも交通費など経費を計算してみると、自分で作っちゃえば良い」と8年前にリラクゼーションの「もむ蔵」を開設。さらに「茨城総合整体学院」も開校させました。

  従業員16人を抱える会社へと成長してきた同社ですが、男性1人を除いてすべてが女性スタッフ。武中社長は「スタッフ全員を正社員化させたいのです。で も、断る方もいます。子どものため、夫のためにと、フルタイム勤務を拒む女性が多いのです。ならば女性が働きやすい環境を整えるしかない」と、事業所内託 児施設を開設してしまいます。

 「私も食品衛生責任者の資格を持っているので、給食作りなど現場で働いています。保育士も採用して社員の子どものほかに、社外のお子さんも預かれるように受け入れ人数枠を増やすよう、県に届出を出し人数拡大も実現できました」と託児所の拡充を図っています。

 武中社長は自らも保健士資格を取ろうと現在、勉強の最中で、今年受験に挑むそうです。

 「社員達も子どもの手が離れれば次は親などの高齢者介護が必要になるのでは」と、武中社長は将来を見通して、「託児所だけでなく、お年寄りも集まって来られる『家庭園』を作るのが私の理想」と、夢を語ります。

 武中社長の視線は常に女性の立場を離れることはありません。「借金も財産のうちと言いますが、私は無借金経営を貫いています。こうした無借金の部分は、どこかに女性ならではの特性が残っているのかも」と話します。

 同社は栃木にも営業拠点を持ち、次は鹿行地方にも支店を開設しようと計画中です。それは鹿行地方では女性が働く場が少ないからだそう。女性が活躍できる雇用の場を作り出したい、という思いが込められているのだそうです。

 広々とした社内には社員たちの趣味の道具やゴルフバッグなども置かれ、働く方々も明るい方ばかりです。社員旅行や花見会、忘年会などの社内行事も多く、パートさんにもボーナスが支給されるという社風は、武中社長の明るくおおらかな人柄の存在が大きな要因のようです。

Pick up Success in IBARAKI

“社員の働く環境を整える”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
茨城は頑固な方が多いと思う。でも、それは心の厚い人。一度飛び込むと面倒見がよく、良いアイデアを出してくれる。起業しやすい土地柄ではないかと思う。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
意気込みとビジョンが必要。5年後社員は10人に、10年後は正社員化といった将来の姿を想像することが大切。起業の際はなんでも聞いてみることを勧める。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
茨城を好きになることが大切。仕事の依頼を一回断る勇気も。それでもまた連絡が来たら、これは「ご縁」だと思って仕事を受けると発展できる。

これから起業する方への一言

“「教えてほしい」と言えば誰も「NO」とは言わないのが茨城人の利点である”

私は何も知らずに起業したが、「教えてほしい」と言えば誰も「NO」とは言わないのが茨城人の利点である。女性ばかりの会社だが、末永く働いてもらうためにも女性のための働く環境づくりも大切。魅力的な職場の雰囲気づくりも欠かしてはいけない。

■自分がチャレンジすることは周りに公言し有言実行
■常に夢を持ち、語ること。ビジョンが将来を作っていく
■社員が働きやすい環境を作ることが経営者の役目



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