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ひたちなか海浜鉄道株式会社
代表取締役社長  吉田 千秋さん

柔軟な姿勢で新しい風を取り入れ、再生に懸ける

長らく鉄道業務に携わり、地方鉄道の復活において成果を上げてきた吉田千秋さんは、言わば再生のプロ。開業から2年半、自らのノウハウを駆使し奮闘中。湊線の貴重な車両やレトロな駅舎はロケ地としても人気。メイドトレイン運行にはマスコミから取材依頼も。

Owners Company
ひたちなか海浜鉄道株式会社
TEL.029-212-8023
FAX.029-262-5866
http://www.hitachinaka-rail.co.jp/
ひたちなか市釈迦町22番2号

地域・鉄道ファンに愛される、ひたちなか海浜鉄道湊線
さまざまな企画で利用客増加

勝田―阿字ヶ浦間を走る、ひたちなか海浜鉄道湊線。
特に那珂湊駅は、大正時代から残る木造駅舎がタイムスリップしたかのような趣を残し、映画やCM撮影のロケ地として度々登場しています。

 前身の茨城交通から湊線を引き継ぎ、開業3年目。
吉田さんは立ち上げに奔走し「周囲の方に助けて頂く日々」を過ごし、減り続けていた地元の利用者を取り戻すべく、さまざまな企画を考案。
外部からのアイディアも積極的に取り入れてきました。

 高校生の通学用定期券を大幅値引き。
乗車中飲み放題の貸し切りビア列車。
さらに喫茶ならぬメイドトレインは、各メディアからも注目を集めました。
「話題性は強力なアピール。おもしろいと感じれば、とにかく試してみます」

 ひたち海浜公園、おさかな市場と、観光スポットに恵まれており「良い背景がもったいない」と観光客の呼び込みにも着手。
シャトルバスの貸し出しや乗車券とセットのクーポン、レンタサイクルなどで連携を図ってきました。
努力が実り、利用客は年々増えています。

 大学卒業後、地元・富山の鉄道を一手に担う富山地方鉄道に勤務し、現場駅員をはじめ事務職も経験。転機は、加越能鉄道に出向時、客足の減少で廃線危機にあった万葉線に直面したこと。
路面電車を運営するための第三セクター会社の設立は日本初で、その立て直しに尽力したのです。

平成20年、43歳の時に、万葉線と経緯が酷似した湊線の危機を知り「やり方が通用するはず」と一念発起。
実績が評価され、分社化に伴い、公募から社長に就任しました。
茨城に来て気付いたのは「海があり、魚や農作物が豊富。のんびりした気質も富山と似ていました」。

 「流れに身を任せる姿勢」と言いますが、良い流れを引き寄せるのは、鉄道への愛情と地域の活性化を見越した広いビジョン。
開業5年目が湊線節目の100周年にあたり、増発や収支黒字転換を目標に掲げています。
しかし「本当は鉄道を収支だけで判断してほしくはない」。
ただ「成功例として全国に発信できたら」。

再生請負人の挑戦は、まだまだ始まったばかりです。



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