President file
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株式会社匠の会住宅
代表取締役  小川 良人さん

茨城弁の親しみやすさで
嘘のない自分を売り込む

常陸太田市出身。大手ハウスメーカー時代はトップセールスマンとして活躍。その時代に付き合った業者や顧客の信頼を得て創業。お客さまとの付き合いは一生というほど、顧客との信頼関係築くことを信念とする。現在は、業務の中心は息子さんの小川武志専務に任せ、もっぱら社会貢献活動に専念する。

Owners Company
株式会社匠の会住宅
TEL.029-275-8111
http://www.takuminokai.co.jp
ひたちなか市東石川3070-7

「お客さまは神様ではない、お客さまは友だちと思え!」
そこが将来にわたって、
会社の信頼と実績を積み上げていく基本

外壁総レンガタイル張りやシステムバスなどをいち早く採り入れた完全注文住宅の家造りで躍進を続ける「匠の会住宅」の小川社長が独立したのは、弱冠28歳の時でした。

  常陸太田市(旧水府村)出身の小川社長は高校卒業後、大手ハウスメーカーに約10年間勤務。営業畑で業績を上げた、売れっ子営業マンでした。それまで色々 と面倒をみていた業者さんから「支払いは1年間待ってあげるから、やってみろ!」と言われ、自宅前の6畳ほどの物置を事務所に「匠の会住宅」を立ち上げた のです。

 「昭和58年4月に法人登記しましたが、最初は大工さん3人とともにスタートしました。普通は資金を貯めてから始めるのですが、私の場合は業者さんから言われて始まったので、立ち上げには不安はなかったんです」と小川社長は設立当時を振り返ります。

 「匠というネーミングは、大工さんの集まりを匠の集団と呼んでいたので、それを社名にしました。私は営業で技術がないのですが、匠を集めた会社にした。今は匠という言葉は一般的になりましたね」と小川社長。

 その後、「匠の会住宅」は順調に業績を伸ばしていき、今ではひたちなか市の展示場「デザイナーズステージ」、水戸ショールームなどを展開。県内有数のハウスメーカーとしての地位を確固たるものにしてきました。

  小川社長は「先日も20年以上前に家を建てた方から、リンゴやお餅をいただきました。この話を社員に言うのですが、『家を売るのではなく、人柄を売るん だ!』と自分自身を売ることを徹底させているのです」と話します。小川社長の成約へ結び付ける営業力は、ざっくばらんで本音で付き合うことのできる人柄そ のものでもあるようです。

 また、建設現場では常にあいさつと清掃を徹底させているのが「匠の会住宅」の特徴のひとつです。「トラックか ら材料を降ろしているときに隣の人が通り掛かったら、『こんにちは』とあいさつして、現場では向こう3軒両隣の前くらいは掃除をしろと言っています」と小 川社長。それを徹底させる理由として、「お客さまは一生その家に住むことになるのです。家を建てて引っ越ししてきて、PTAや常会や何かの集まりでも一緒 に暮らす隣近所の人に、『家を建てるときに現場監督さんは良かったよ、大工さんが良かったね』と言われ続けることになるのです」と言います。

 家を建てた人の将来の状況・環境にまで目を向けている家造りが、同社の成長の秘訣のようです。

  職人肌の大工さんは無口で口べたの人が多いそうですが、休憩時間に隣のお年寄りの家の鍬の修理をしてあげたことにより、会社までお礼に来た人もいたそうで す。小川社長は「それは大工さん本人にとっても大きな成長になっています」と言い、自分だけの利益を追求するのではなく、周辺を巻き込んでの幸せ感を創出 しているのが「匠の会住宅」の大きな魅力となっているのです。

 東日本大震災の発生後、いち早く対応できたのも「アフターフォローが大 切」という同社の社風の表れでした。本社のあるひたちなか市は電気や水道などのライフラインがだめになり、車のガソリンも手に入らない中、小川社長を先頭 に同社の社員は翌日から、ユーザーの家々へと補修相談や点検へと出掛けていきました。「お客さまは安心感を抱いてくれました。だから、お礼にと逆にお菓子 やインスタントラーメンなどをもらったこともありました」と言うように、多くの方に感謝されたそうです。お客さまの安心に応える姿勢が、災害時にも信頼を 大きくしたことを証明したのです。

 ハウスメーカーの社長としてトップセールスを精力的にこなす小川社長ですが、一方で社会奉仕活動にも積極的に取り組んでいます。
 ライオンズクラブでは多くの重責を果たし、現在最も力を注いでいるのは青少年の健全育成のさまざまな啓発活動です。

  ひたちなか市や東海村の高校生を対象にした「薬物乱用防止教室」の講師として活躍するほか、「暴力団追放運動」などにも尽力。養護学校では社員も動員し て、のこぎりの使い方などを教え、もの作りの喜びや達成感を感じてもらうためのイベントなども開催し、「会社の仕事は朝の1時間、ほかは社会活動に費や す」という多忙な日々を過ごしています。

 「私は人を教育するということに向いているのかもしれません。社員教育は徹底して行っていますが、未来を担う子どもたちにも薬物に手を出さないなど、人として生きる道を教えています」と小川社長の信念は地域社会に大きな影響と成果をあげているのです。

  順風にみえるハウスメーカーですが小川社長は建築業界の未来について大きな課題も指摘しました。「10年後には大工さんも平均年齢80歳を超えてしまいま す。足場などを組む人は若い世代が多いが、木造建築の場合、大工、基礎、瓦などの職人は後継者が育たない。これからは若い人の育成にも取り組まないと」 と、一人で何でもこなせる「匠」の教育に精力を注ぐ覚悟だそうです。

Pick up Success in IBARAKI

“顧客の将来まで見越す行動が顧客を引きつける”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
私の場合地元出身で、言葉も茨城弁のままで営業してきて受け入れられた。地域性というより誠実な人柄や人を引きつける自分を磨くことが大切だろう。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
建築に関して夢を壊すようだが10年後、15年後には木造建設はなくなってしまう危機にある。これからは基礎や屋根、クロス張り、大工と何でもこなす人材を育てなければならない。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
人間性をさらけ出し、アフターフォローが大切だ。受け入れられるととことん付き合いが深まる。悪い噂が広がるのが早いが、良い噂も早い。人情が厚い土地柄なのだから。

これから起業する方への一言

“人を育てるという想いをもってやることで道は開ける”

住宅メーカーの将来は厳しいだろうが、分業化している職種を一体化できる人材を育てることで日本の住宅文化は守れるはず。人を育てるという想いをもってやることで道は開けるだろう。私の発案したランドリールームなどは大手メーカーも追随した。ユーザーの使い勝手など常に気を配ることを忘れないでほしい。

■あいさつと掃除は忘れずに
■お客さまとは友だち関係を築くことが大切
■素の自分を売ることが、信頼を得るポイントになる



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