President file
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株式会社 LINOR
代表取締役  佐藤 正晴さん

バルーンプレゼントに出会い
今後も他店舗展開に挑む

本業のガス配管業の傍らバルーンアートの店舗「LINOR」を水戸・宇都宮に展開。高校・大学時代からの野球も続けるが「なかなか時間が取れない」というのが悩み。自慢は350ヤードは飛ばすというゴルフ。商売柄夜の付き合いも多く、今だ独身。社名はガス配管業を共に営むいとこの娘さんと飼い犬の名前に由来する。

Owners Company
株式会社 LINOR
TEL.029-246-3399
http://www.linor-co.net
水戸市吉沢町152-2

バルーンアートの店を水戸・宇都宮に展開
ハートと夢を詰めた風船を多くのお客さまに届ける

近年、日本でもプレゼントなどですっかり定着した感のあるバルーンアート。佐藤社長がこの世界へ足を踏み込んだきっかけは「一瞬の思いつき」というから驚きです。

 「友人の誕生会でのことです。そこにプレゼントのバルーンが届いたのです。それを見て、風船だったら俺でもできると豪語してしまい、引っ込みがつかなく なったのです」とバルーンアートの店舗を開くきっかけを話してくれました。「もしあの時、誕生会にバルーンが届いていなかったら、店を持とうなどとは思わ なかったですね」と佐藤社長は笑いながら当時を振り返ります。

 恵まれた体格をもつ佐藤社長は水戸商業高校、流通経済大学と名門野球部に所属。大学卒業後は設計事務所に勤務し、約5年間、CADのオペレーターとして 設計の仕事に携わりました。しかし「このままでは、一生ここで働いて、今のまま何も変われずに終わってしまうのでは」と退職し、思い切って親戚の経営する ガス会社へと転職を果たします。

 それから佐藤社長の仕事は机上の仕事からガス配管をするなど体を張った仕事に変化します。そこで各種資格を取得してゆき、30歳の時に実家の茨城町でガス配管会社「佐藤設備」を立ち上げ独立を果たします。

 「ガスの配管工事などを行う仕事でしたが、それは今でもいとこと共に続けています。その会社で資金を貯めたので、バルーンの店ももてたのです」と、33歳になった佐藤社長は水戸市吉沢町に念願のバルーンアート店を開きました。


「バルーンアートの店は水戸市内には式場やイベントなどで利用されている店はありましたが、贈答用の路面店はありませんでした。研修を受けて技術を学ん で、それなりの資金を掛けてオープンさせたのです」と"思いつき"から始まった夢を実現させるところに佐藤社長の行動力と実直な性格が垣間見えます。

 しかし、当時のバルーンアートはようやく世間に浸透し始めた時代でした。佐藤社長は「ほとんど赤字続きで、本業のガス配管工事の収入で補填する毎日でした」とスタートは順風満帆とはいかなかったようです。


「私の店は浮かない風船を専門にやろうと考えていました。プレゼント用として一般消費者に買ってもらえるものを展開したのですが、一般の人に受け入れてもらえるまでには長い時間が掛かりました」と当時の苦労を語ります。

 しかしその中でも徐々に業績を伸ばし、3年後には栃木県宇都宮にも店舗を拡大。「宇都宮には競合店もなく、また広告費などロットが大きいほど単価が安く 抑えられるので店舗をオープンしました。しかし実際には厳しい面もありました」と佐藤社長の口からは意外な言葉が出ました。

 「水戸は全国的に見ても人口比率でバルーン店が多いのです。競合店があることで消費者にバルーンを認知してもらえます。宇都宮には競合店がないばかり に、市民にバルーンアートのイメージが浸透していないのです。単なるイベントやお祭りの風船屋さんと思われているのです」と、水戸と宇都宮のバルーン文化 の違いによる厳しさも教えてくれました。

 しかも風船は割れる商品です。「スタッフの研修などではガスの注入などで割れてしまいますので、かなりのロスが出ます。プレゼントの配送にしても途中で割れてしまったなどの苦情も多く、作り直すなどリスクの多い仕事ですね」とその商品特性の苦労を語ります。

 しかし、佐藤社長のバルーン店「リノア」は水戸で着実に実績を積み上げていきました。ケーズデンキスタジアムのこけら落としでバルーンアートを演出する 仕事を請け負い、その後もブライダル式場などとの契約や各種イベントの演出などバルーンでの活躍の場を広げてきました。スタッフも水戸・宇都宮合わせて7 人を抱え、水戸のバルーンアートの現場では欠かせない存在に育て上げて来たのです。

 一方、バルーンアートの業界では現在、深刻な問題を抱えている―と佐藤社長。「風船には欠かせないヘリウムガスが不足しているのです。世界の7割を産出 するアメリカで減産状態が続いていて、有名テーマパークでも風船の販売が取りやめになりました。バルーン業界では深刻な事態ですが、ヘリウムガスはMRI などの医療現場でも必需品のようです。私の店は、浮かない風船が中心で影響は少ないのですが、どうしてもブライダルなどでは風船を飛ばす演出が必要となり ます。お客さまの理解を得るのにも苦労しています」と、バルーン業界の先行きには暗雲も立ち込めているようでした。

 しかし、バルーンアートは数百種類もある風船をアレンジし、出産祝いやバレンタイン、母の日、快気祝い、プロポーズの際のサプライズ演出などさまざまな メモリアルシーンで利用されるようになりました。アメリカ、韓国などに次いで、日本ではプレゼント商品としての認知度が増しています。さらに幼稚園や養護 学校の先生など多くの方々からバルーンアートを習いたいとの要望もあるそうです。

 佐藤社長は今後も「小さくても良いから、お花屋さんのように飲食店街やまちなかにプレゼントの店としてバルーンアートの店を展開していきたい」と、自らの夢の風船を大きく膨らましています。大空に飛び立つ風船のように。

Pick up Success in IBARAKI

“あの時やれば良かったと後悔しない”

質問1茨城は起業するのに適しているか?
私はガス配管業者として起業したが、バルーン業界では同時に起業する人がいて刺激になった。バルーンアートはまだまだ発展の余地はあると思う。
質問2経営を始める際にやるべきこと、また、必要な準備は?
この仕事は初期投資が掛かる。本業で資金を貯めたが、インターネット販売などを行っている店もある。軌道に乗るまでの覚悟が必要だ。
質問3この土地で有効なプロモーション活動は?
認知されていない業界だったので、主にフリーペーパーなどに広告を出した。徐々にリピーターの口コミで広がっていった。

これから起業する方への一言

“後悔するよりチャレンジしてほしい”

私はCADのオペレーター時代にソフト会社の人から独立を勧められたことがあった。当時はまだ25歳ぐらいで、独立なんて考えてみなかったが、今思うとあの時独立していたら違う人生を歩んでいたかもしれない。後で振り返るより、「その時」に行動を起こすことも大切だ。チャンスがあれば果敢に挑戦してみることも必要かもしれない。後悔するよりチャレンジしてほしい。

■一つに風船にも思いを込める
■単純なきっかけでも自らの人生は変えられる
■商品情報などは常に新鮮なものを提供



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